日銀の金融緩和修正で日経平均下落も…銀行セクターが軒並み高値となった理由

12月20日(火)、日銀は大規模な金融緩和策の修正を決定し、これまで0.25%程度に抑えてきた長期金利の上限を、0.5%程度に引き上げることにしました。この報道により、外国為替市場では事実上の金融引き締めになるという受け止め方から円高ドル安が加速しました。

円相場は、一時、1ドル132円台前半となり、日銀の発表前と比べて約5円値上がりし、今年8月以来、4ヵ月ぶりの円高水準となりました。お昼に発表があったため、株式市場では午後の取り引きが始まるとともに、ほぼ全面安となりました。日経平均株価は一時800円以上も値下がりしました。

今後は金利の上昇によって企業の設備投資や個人の住宅の購入などに影響が出ることが予想され、景気の先行きに不透明さがでる事などから株価にはネガティブな気配です。


4つの相場サイクル

株式相場には、「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」という、4つの相場局面のサイクルがあるとされています。大まかに、金融相場と業績相場は株価が上昇傾向、逆金融相場と逆業績相場は株価が下落傾向という特徴があります。

4つの局面について、最近の動向と照らし合わせてみたいと思います。

金融相場

不況期に中央銀行が金融緩和を行い、株価が上昇し始める時が「金融相場」です。将来の景気回復を期待し、株価が上昇しやすくなります。低金利になり、世の中にお金が出回ることで企業は借り入れをしやすく、また利払い負担が軽くなることで設備投資を積極的に行いやすくなります。

2020年3月中旬に米連邦準備理事会(FRB)が新型コロナウイルス蔓延による経済への影響を軽減するため、政策金利をほぼ0%まで切り下げ、7,000億ドル規模の量的緩和政策を導入しました。その後、イギリスやEUなど各国が金融対策へと足並みをそろえました。

この局面では、一般的に成長性が高いとされるIT関連や新興企業などの「グロース株」が上昇しやすくなります。また、金利低下により恩恵を受ける不動産セクターや、景気敏感セクターも上昇しやすいです。

金融相場時に強いセクターは不動産、金融、鉄鋼、化学、工作機械、IT、バイオなどです。

業績相場

金融緩和が景気の回復や企業業績の改善で、株高を牽引する相場のことを「業績相場」と言います。不況時に落ち込んだ業績の回復が見込まれるため、景気拡大でメリットを受ける業種の株価が上昇しやすくなります。

逆金融相場

景気や企業業績の拡大は続いているものの、中央銀行の金融引き締めにより景気後退の兆候が見え始め、株価が下落し始める時を「逆金融相場」と言います。米国連邦準備制度理事会(FRB)は2021年11月上旬に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400億ドル購入している量的緩和策について、当月から米国債100億ドルと住宅ローン担保証券50億ドル、毎月150億ドルずつ減額すること(テーパリング)を決めました。

企業業績の頭打ちや悪化が見込まれる逆金融相場では、景気変動に敏感なセクターの株価は下落しやすくなります。一方、電気・ガスなどのインフラ、生活必需品など日常生活に欠かせないモノやサービスを提供する企業には、一定のニーズが存在します。景気後退期でも需要が落ち込むリスクが相対的に低いと考えられるため、このような業種に資金が向かいやすくなります。

また、金利が上昇しても業績に影響が出にくい無借金企業など、バランスシートが健全な企業が上昇しやすくなります。

逆業績相場

金融引き締めにより景気が後退し、企業業績や消費が落ち込み、本格的な下落トレンドとなることを「逆業績相場」と言います。前述の逆金融相場と同様に、景気と業績の連動性が低い医薬品やインフラ、生活必需品といったディフェンシブセクターに資金が向かいやすくなります。また、高金利でメリットを受ける銀行、保険会社などの金融セクターも注目されやすくなります。

金融緩和政策発表がされた当日の後場、銀行株は高値をつけました。三菱UFJ(8306)は前日比9.6%高となりなりました。三井住友(8316)も8.9%高、みずほ(8411)も約7%高と、日経平均株価が下落する中で急騰し、銀行セクターは軒並み高値となりました。逆金融相場は中長期的に見ると優良株の仕込み時とも捉えられます。


相場は景気と金利の動向により、4つの相場局面で循環することが多いですが、1つのサイクルの長さや上昇・下落の大きさはさまざまです。そして、サイクルが変化するきっかけは中央銀行や日銀の金融政策です。金融政策決定会合や米雇用統計などの重要経済指標をチェックし、トレンド転換に乗り遅れないようにしたいです。

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