プレス装置製造の北川精機 県、長崎市と立地協定 設計拠点開設へ

立地協定に調印した(左から)大石知事、内田社長、田上市長=県庁

 スマートフォンなどの電子回路基板を成形するプレス装置の製造で世界トップクラスのシェアを誇る北川精機(広島県府中市)は27日、長崎市に新たに開設する設計拠点「長崎技術センター」の立地協定を県、長崎市と結んだ。御船蔵町の長崎駅前電気ビルで、2024年11月の開設を予定し、5年間で15人の雇用を見込んでいる。
 同社は通信機器、家電、車載装置などの電子基板を成形するプレス装置の製造、販売を手がける。九州への拠点進出は初めて。デジタルトランスフォーメーション(DX)により高まる電子部品の生産設備需要に応えるため、設計開発機能を強化する狙い。
 県庁で大石賢吾知事、田上富久市長、同社の内田雅敏社長が協定書に調印。内田社長は、既に県内企業に加工・組み立て業務を発注しているとし「ものづくりの場所として魅力を感じている。将来的には設計開発から製造まで県内で完了できる態勢を目指していきたい」と述べた。

◎インタビュー 内田雅敏社長 技術力向上に期待

 北川精機の内田雅敏社長に長崎市進出の経緯や期待を聞いた。

 -長崎進出の経緯は。
 当社が製造するプレス機は大型で、かつては受注にも増減の波があったため、一部工程を外注する場合が多かった。しかし近年の電子部品の旺盛な需要環境により、地元で発注先を確保するのが難しくなった。造船分野に強い地域を中心に企業を探す中で、長崎に着目。実際に加工、組み立てを請け負っていただく企業を見つけることができた。
 今後も需要に応えていくため、設計開発部門も強化する必要がある。県や市、県産業振興財団などの熱心なサポートもあり、設計拠点の開設を決めた。新型コロナ禍で、リモートワークの環境やノウハウが整ってきたことも大きい。

 -期待することは。
 本社がある広島県府中市は、技術系の人材獲得競争が厳しく、確保に苦労している。長崎には大学工学部や工業高校などもあり、豊富で優秀な人材が確保できると期待している。雇用先が少なく若者の県外流出が課題と聞き、地元就職の受け皿になれるとも考えた。
 また長崎のものづくり企業は造船のみならず、半導体関係の仕事も多く請け負い、日ごろから技術力が鍛えられていると感じた。われわれが教わることも多く、今後さまざまな相乗効果も出てくるのではないか。

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