ねぎらいの歳末

 「労」の旧字は「勞」で「激しく火を燃やすように力を出し尽くす」という意味がある。力を出し切ればすっかり疲れる。そのため「労」の字は「いたわる」とも「ねぎらう」とも読む▲この一年、燃え盛る「勞」の字となって働き、または一事に励んで、これからしばらくは羽を休める頃だろう。きのうは大方の職場で仕事納めだった▲昨夕、同僚や仲間と慰労のひと時を過ごした人も多いに違いない。いろいろと大変だったね。いたわる声が交わされたとお察しする。年忘れというよりも、この年を頭と心に刻む“刻年会”になったかどうか▲私たち長崎県民には、県史に刻まれる変化の年だった。新幹線の開通がそうだが、政界には世代交代の波が押し寄せ、今も変化のさなかにある▲39歳の知事が誕生した。元知事の参院議員が政界を退いた。4期目の長崎市長、佐世保市長は、ともに来年春の市長選に出馬しないと表明した。長年の務めに、「1年目」の労苦に、今頃ねぎらいの声がかけられているだろう▲いたわりは「劬り」とも書く。「劬(く)」は人が背中を丸くかがめた姿で、「うつむいてせっせと働くさま」を表すという。例えば、年末も年始もなく医療現場でコロナ対応に追われる人の姿がそれだろう。年の瀬の世の中に「勞」と「劬」が入り交じる。(徹)


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