美しさ、優しさ、小さな世界に込めて 宇都宮出身・和菓子作家の坂本紫穂さん

 「五感の芸術」と言われる和菓子。手のひらに乗るほどの小さな世界に、日本の四季や美意識が表現されている。宇都宮市出身の和菓子作家坂本紫穂(さかもとしほ)さん(40)の作品は、伝統の中に現代的な透明感や繊細さを感じさせ、多くの人を魅了する。坂本さんは「イメージの源泉は宇都宮で過ごした幼少期」と話し、故郷とちぎの豊かな自然と文化を和菓子に映し出す。

 2023年を寿(ことほ)ぐ新作の菓銘は「花うさぎ」。卯(う)年と、先進7カ国首脳会議(G7サミット)に伴い日光市で6月に開かれる男女共同参画・女性活躍担当相会合をテーマにした。

 ウサギ2羽は、表面に氷餅を付けることで雪のような白さと柔らかさを表現した。仲良く見つめているのは、濃淡を付けた小さな四角い琥珀(こはく)糖をいくつも重ねた紅梅とロウバイ。優しくかわいらしい和菓子だ。

 色の濃淡は坂本さんの作品の特徴で、「揺らぎのある雰囲気が好き。優しいイメージにしたい時には、グラデーションを入れて色合いを穏やかにしています」。

 「印象を和菓子に」をコンセプトにした独創性あふれる作品は、大手和菓子店とのコラボレーションや海外有名ブランドのイベントなどからの依頼が絶えない。

 自身のホームページには、300以上の美しい作品が並ぶ。「子どもの頃、秋の乾いた葉っぱの匂い、耳がツーンとするほどの冬の空気などを感じて過ごした。自分が受け取っていた四季のイメージが、お菓子のデザインや発想につながっていると思います」

 また、ちょっとした心遣いで場を和ませ「丁寧に生活を楽しむ」という祖母や母の姿勢にも影響を受けた。「小さくて、かわいらしくて、さりげなくて優しいものを創れる人になりたかった」。そしてたどり着いたのが、和菓子だったという。

 和菓子の魅力を伝える活動にも精力的で、「地元栃木に貢献したい。どんなことができるのか楽しみです」とほほ笑んだ。

 

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