福井県知事選挙4月9日投開票、選挙戦の公算 杉本県政1期目の審判 共産が対抗馬擁立へ 統一地方選挙2023

杉本達治氏
2023年の福井県内選挙日程

 2023年春の統一地方選の福井県知事選では、杉本達治氏(60)が再選を目指す。共産党県委員会が対抗馬の擁立に向けた調整を進めており、選挙戦となる公算が大きい。新型コロナウイルスや大雪・大雨などの危機対応、原子力政策、北陸新幹線県内開業を見据えたまちづくりなど、杉本県政が進めた4年間の政策が審判を受ける。投開票は4月9日。

相次ぐ危機

 昨年12月、杉本氏は出馬会見で「危機管理事象が多かったが先手先手で乗り切った。新しいことにもチャレンジできた」と1期目を総括。2024年春の北陸新幹線県内開業を念頭に「県政を飛躍させる100年に一度のチャンス。福井の新しい時代を切り開いていく」と述べ、次の4年に向けた意気込みを示した。

 1期目は杉本氏が語る通り、困難の連続だった。就任1年後から県内でも新型コロナの感染が拡大。流行第1波では一時、人口10万人当たりの感染者数が全国上位になり、県独自の緊急事態宣言を出した。

 入手困難になったマスク購入券の全世帯配布や軽症者・無症状者を受け入れる宿泊療養施設の開設など、全国に先駆けた施策を打ち出し「福井モデル」として注目を集めた。医師を対象にしたアンケートでは全国の知事でトップの評価を受けた。

 一方、第6波では「まん延防止等重点措置」の申請を見送り、長引くコロナ禍で疲弊する飲食店などからは、時短要請の協力金が得られないことへの不満の声も聞かれた。

迫る期限

 重要課題である原子力政策でも難題に直面した。

 21年4月には、運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機と高浜原発1、2号機の再稼働に同意。その過程では、中間貯蔵施設の県外計画地点の提示が再稼働議論に入る前提との認識を示した杉本氏。「23年末までに候補地を確定させる」と期限を後退させた関電の報告を評価したことで県会の認識とズレが生じた上、その後、一転して再稼働と中間貯蔵施設の問題を切り離す考えを示し、議会側を困惑させた。

 期限まで1年弱。これまで約束を2度ほごにされ、今も表だった進展は見られない。関電は、約束を履行できなければ3基の40年超原発を計画地点確定まで運転しないとしている。原発に対する国民不信がある中、三たび約束が守られない恐れもあり、その場合、知事として大きな政治決断を求められることもあり得る。

効果の最大化

 同じく県政の重要課題である北陸新幹線では、23年春の予定だった金沢―敦賀間の開業が1年遅れる事態に陥り、工事費が2658億円膨らんだ。杉本氏は当初「追加の地方負担は極力少なく」と発言。「地方負担ゼロ」を求める県会の自民会派と足並みが乱れた。「国に物申していく姿勢がもっと必要だ」(ベテラン県議)と強い姿勢を求める声も出た。

 「100年に一度の好機」に向けて、県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館(福井市)の開館、県立恐竜博物館(勝山市)のリニューアルなど、にぎわいづくりの拠点整備は進展。一方、新幹線駅からの2次交通の充実、効果的なプロモーション活動、おもてなし機運の醸成など解決されていない課題は少なくない。開業効果の最大化に向けた一層の取り組みが不可欠だ。

 大阪延伸も道半ば。京都府内での環境影響評価(アセスメント)の遅れなどから、目指していた今春の認可着工は見送られた。早期認可、全線開業に向けた道筋を付けられるか、次の知事は強い政治力とリーダーシップが問われる。

 知事選では新人1人が20年に立候補を表明している。

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