『作業員急増、潤いと不安』 宇久メガソーラー宿舎完成 過疎の島に最大1000人

メガソーラー計画の作業員200人が使う宿舎=佐世保市宇久町

 国内最大規模の太陽光発電所(メガソーラー)建設計画の準備工事が進む佐世保市宇久島で昨年末、作業員約200人が使う宿舎が完成した。今月から徐々に入居し、関連施設の工事が本格化する。作業員はさらに増え、最大千人規模となる予定。過疎化が進む島では、一時的な作業員の急増が地域経済に潤いを与えると期待する声が上がる一方、交通事故や防犯対策への不安も聞こえる。
 島と本土を結ぶ船舶が行き交う宇久平港。近くの小高い場所に宿舎(敷地約5千平方メートル)はある。もともとは市所有の旧宇久シーパークホテル跡地。事業者の協力会社がホテルの建物や土地を購入。昨秋以降にコンテナを搬入して作業員の部屋や食堂を備える宿舎として整備した。
 島内では宿舎建設を含め準備工事が始まっており、多い時期には作業員約100人が宿泊施設などに滞在。今月中旬には宿舎に新たに30人程度が入居し、本土に電力を送るための施設の建設などを始める。地元の旅館や空き家なども利用し、今年夏ごろには作業員を約300人に増やす予定。今後、太陽光パネルの設置工事が本格化すれば最大で千人規模になると想定している。
 同市宇久町(宇久島、寺島)には、1960年代前半まで1万人以上の住民がいたが、人口流出などで約1900人まで減った。作業員が増えていることについて、ある旅館の経営者は「いろいろな場所にお金が落ち、経済効果は大きい」と歓迎。商店や飲食店などの売り上げを押し上げているという。
 一方、作業員の急激な流入を不安視する島民もいる。工事車両の頻繁な往来が交通事故のリスクを高めると懸念。事業者は基本的に日本人の作業員を採用する方針だが、治安の乱れを心配する声もある。
 事業者は島民の代表らと交通や防犯の対策を検討する協議会を設置。警備員を配置するなどの対応を考えている。宇久地区自治協議会の阿野房良会長は「今後も住民としっかり話し合い、不安を取り除く努力を続けてほしい」と求める。
 計画に反対する地元のNPO法人「宇久島の生活を守る会」の佐々木浄榮会長は「経済効果は一時的。工事が自然や生活環境のバランスを壊す」と訴える。
 建設には、ほかにも課題がある。島と本土を結ぶ送電用の海底ケーブル(全長約64キロ)敷設を巡り、県北の漁協組合長が「漁業環境が悪化する」と反発。事業者は昨秋まで海域への影響調査を実施し、漁協側にケーブル敷設などが「漁業環境に与える影響はほとんどない」と理解を求める。
 事業者は「島民や漁業者、自然環境に十分配慮し、安全安心な形で工事を進める」としている。


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