時間がかかっても大丈夫 吃音の若者が接客 「注カフェ」栃木県で初開催

三重県伊勢市で開催された「注カフェ」で客と交流する若者たち(中央)=2022年7月(奥村さん提供)

 言葉が滑らかに出てこない吃音(きつおん)がある若者が店員として接客する1日限定のカフェが22日、栃木県宇都宮市中戸祭1丁目の本屋「書肆(しょし)ひるね」で開店する。店名は「注文に時間がかかるカフェ」(注カフェ)。接客を通じて自信を付けてもらうことや吃音への理解を深めてもらうことが狙い。全国で広がりつつある取り組みで、栃木県での開催は初めてだ。県内在住の当事者が踏み出す一歩を後押ししようと、15日まで学生スタッフを募っている。

 注カフェの発起人は、自身も吃音に悩んだ経験がある東京都目黒区の奥村安莉沙(おくむらありさ)さん(30)。幼児期から吃音があり、10〜20代では重い症状に悩んだ。「あ行」の発音が苦手。カフェではアイスコーヒーが飲みたくてもココアを頼むなど、希望と異なるメニューを注文することもあった。カフェ店員になる夢も諦めていたという。

 転機はオーストラリアへの留学。職場体験のプログラムに参加した際、障害や病気の人らが生き生きと働く姿がヒントになった。

 帰国後に注カフェを企画し、2021年8月に都内で初めて開催。交流サイト(SNS)などで共感が広がり、北海道から福岡県まで全国8カ所での開催につながった。吃音があるスタッフがそれぞれ言いやすい表現で話せるよう接客マニュアルがないのが特徴だ。

 「書肆ひるね」店主の藤田優樹(ふじたゆうき)さん(25)は取り組みに賛同した1人だ。学生時代に新聞記事で注カフェを知り、「自分の店を持ったら実現したい」と思いを温めてきた。昨年2月に書店をオープンし、夏に喫茶スペースが完成したことで今回の開催につながった。

 22日の注カフェは午後1〜5時で、客の定員は30人。吃音がある高校生以上の学生を若干名、スタッフとして募集している。

 奥村さんは「接客を通じて自信をつけ、自分を変える機会にしてほしい。地域の方にも吃音を知ってもらい、当事者が過ごしやすい環境になっていくといい」と願う。藤田さんは「他者との違いを理解する人が増えてほしい」と話した。

 (問)kitsuoncafe2021@gmail.com

 

三重県伊勢市で開かれた「注カフェ」で接客するスタッフ(左)。人前で話すことに自信を持ってもらうことなどを目的としている=2022年7月(奥村さん提供)

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