バスマニア・菊池さん(20) 限りない愛で企画連発 コンテストで優勝も

バスの魅力を発信し続ける菊池さん=長崎市滑石4丁目

 赤ん坊の頃、親に連れられて、生まれて初めて立った場所はバスの運転席。ひょっとしたら、その日から運命は決定付けられていたのかもしれない。長崎大のバス愛好団体「たびぶたい」代表で同大経済学部2年、菊池将成さん(20)。自他共に認める「バスマニア」で、バスにちなんだイベント開催や商品開発に情熱を注ぐ。
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 西鉄バスが走り回る北九州市出身。物心ついた頃からバスが好きで、小学生の間に同市内のバス路線を全て制覇。小学6年の時には西鉄バスの絵画コンクールで入選した。
 地元の高校を卒業後、長崎大に進学。長崎にやって来た2021年3月31日、たまたま乗り合わせた西鉄高速バス「出島号」が、3列シートでの最後の運行の日だった(現在は4列シート)。「長崎でもバスにもっと携わっていこう」。いかにもマニアらしい決意表明だった。
 入学後の11月、同大の「ビジネス実践力育成プログラム」を活用し、「たびぶたい」を立ち上げた。学生向けのバスツアーを企画したが、新型コロナ感染拡大の影響で中止に。それにめげず、昨年4月、市の「長崎伝習所」の一つとして「たびぶたい・のりもの塾」(塾生5人)を開所し、塾長に就いた。
 22年8月、佐世保市でバスの美術展を開催。9月には東長崎地区を走るバスの「終点」のみを巡るツアーを企画し、全国から20人が集まった。お薦めの路線や時間帯を記したバス写真集などの発行も予定。受験シーズンに、受験生向けにツイッターでバスの写真付き応援メッセージを発信したりもしている。
 現在、長崎バスのバス停キーホルダーを制作。50個限定販売の準備を進める。キーホルダーの中にバス停の標識を埋め込み、光沢が出るようにラミネート加工を施した。全て手作りだ。
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 立て続けに企画を連発する様子はさながら「快速バス」。車同士がすれ違うのも難しい「狭隘(きょうあい)路線」を走ったり、木の床など他県ではあまり見られないレトロな車体が長崎のバスの魅力だという。
 意外なデータがある。菊池さんによると東京が4人当たり1台、福岡は2台、長崎3台。これは人口当たりのバスの台数。長崎は実は全国1位なのだ。「長崎人にとってバスは身近な存在であるはず。PRにさらなる伸びしろを感じる。もっと長崎の乗り物を面白くしていきたい」。言葉に熱がこもる。
 22年10月には「長崎学生ビジネスプランコンテスト」に出場し、優勝した。バス停キーホルダーと往復乗車券を封入したガチャガチャ(カプセル自動販売機)を回し、目的地を決めるランダムバス旅行「ガチャばす」を提案。今後、長崎バスターミナルに設置される見通しだ。
 尽きることのないバス愛。「長崎のバスは、まだまだブランディング価値がある。普段あまりバスを使わない人と、バスが好きな人との距離を縮めていきたい」


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