共通テスト終わる

 病に伏せる正岡子規は、障子の紙をガラスに替えた。そうして〈季節や日々の移り変わりを楽しむことができた〉。外の景色が見えて気分も変わったようだが〈それはどういうことか〉と聞かれると、答えに詰まる▲大学入学共通テストに県内では4700人が挑んだ。〈どういうことか〉は国語の出題の一つで、五つの中から答えを選ぶのだが、解いてみて迷いに迷う▲選択肢の一つを少し短くしてご紹介すると〈ガラス障子を通して多様な景色を見ることが生を実感する契機となっていた〉。ほかもそうだが、すっと頭に入る文ではない▲共通テストは思考力と判断力が問われる。数学でも問題文が長かったりして「読み取りに苦労したのでは」と大手予備校が分析していた▲問題文も選択肢も理解するのが難しい。出題の傾向は昔とずいぶん変わったらしいが、受験生の心持ちはどうだろう。センター試験のさらにその前、共通1次試験を受けた身だが、今時分は遠い遠い記憶がよみがえる。苦手な数学でしくじって肩を落としたこと。それでも長いトンネルを抜けたような気がしたこと…▲受験シーズンは続くが、ひとまずあちらこちらで、安心の声とねぎらいの声が交差したことだろう。長いトンネルの先に春の光が差すことを。「受験生」は春の季語という。(徹)


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