『一点一点、表情は異なる』 魂こもる初窯たき 波佐見・治甫窯

まきを投入する立井さん=東彼波佐見町、治甫窯

 波佐見焼をまきで焼く穴窯がある東彼波佐見町稗木場郷の治甫(じすけ)窯(立井清人代表)で13日から15日まで、初窯たきがあった。茶わんや湯飲みなど約250作品を焼いており、22日に窯出しをして販売する。
 窯元は通常、温度を自動調整でき、省人化できるガス窯や電気釜を使うのがほとんど。治甫窯も普段はガスを使っている。1995年、立井さん(75)が「工業製品ではない、本来の姿の焼き物を作りたい」と初窯たきに穴窯を使うようになった。窯の中での灰や煙、炎の当たり方によって、作品は光沢や模様が異なる仕上がりになるという。
 波佐見焼のろくろ成形工の「現代の名工」でもある立井さんが手がけた作品などを穴窯に入れ、13日正午に火入れ。火力が強いというアカマツやカシのまきを5分おきに投入した。内部温度を1250度まで上げ、42時間後の15日午前7時過ぎ、投入を終えた。
 22日の窯出しは午前10時から。立井さんは「手間も燃料代も5倍かかり効率は悪いが、一点一点表情は異なり、魂や愛着がこもる。見に来てほしい」と話した。


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