難問に挑む

 〈受験などは遠い遠いこととなりましたが「国語の一問くらい解いてみるぞ」と構えました〉。当欄で先ごろ、大学入学共通テストの出題をご紹介したが、雲仙市の70代女性から、少しだけ解いてみたと手紙を頂いた▲当方と同じく、正岡子規にまつわる問いに挑んだらしい。詩文などの「文事(ぶんじ)」に触れるのが好きで、問題文の「子規」の文字にわくわくしたという▲出題では、病に伏せる子規がガラス障子越しに〈季節や日々の移り変わりを楽しむことができた〉という文章を引き、それはどういうことか、と問うた。選択肢は五つあり、例えば〈現状を忘れるための有意義な時間になっていた〉と、どれも正しいように思えてしまう▲女性が選んだのは〈多様な景色を見ることが生を実感する契機となっていた〉。ご名答。〈正解に至りとてもうれしかったです〉。手紙の文字が弾んでいる▲読解力が問われる共通テストは手ごわいな、と思いつつ、当方は次に数学の一問に目をやった。設問自体がえらく長くて難しい。「手ごわい」ではなく「お手上げ」だった▲昔、先輩記者に教わった。〈難しいことを難しいまま書くのは易しい。難しいことを易しく書くのは難しい〉。受験生の皆さんは難問に挑み、当欄も「易しく書く」という難問に及ばずながら挑んでいる。(徹)

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