寒さ耐え和紙原料を「川ざらし」 津山の生産地でミツマタ洗う

冷たい川の水でミツマタをもみ洗いする康正さん夫婦

 20日は寒さが1年で最も厳しくなるころとされる二十四節気の「大寒」。岡山県郷土伝統的工芸品「横野和紙(津山箔合紙<はくあいし>)」の唯一の生産地・津山市上横野地区では、原料のミツマタを川で洗う今年初の「川ざらし」が早朝から行われた。

 県重要無形文化財保持者の和紙職人上田繁男さん(80)方では、長男康正さん(57)と裕子さん(54)夫妻が近くの横野川で作業。石灰水で煮て繊維を軟らかくした県産のミツマタ約50キロを冷たい水で約1時間半かけてもみ洗いし、汚れを取り除いた。

 年間を通じ月1回程度行われているが、冬場は川に不純物が少なく水量も一定で最適という。洗った後に機械で砕き、トロロアオイの粘液を混ぜて紙をすく。

 康正さんは「国内にとどまらず世界の人々にも知ってもらえるよう良質な和紙を作り続けたい」と話す。

 横野和紙は江戸時代に生産が始まった。金箔(きんぱく)の保存に利用されるほか、強度や色合いを生かして古文書修復などの用途でドイツやカナダにも輸出されている。

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