大分トリニータ 新カラーは着実に 下平監督がチームに与えた変革とは 【大分県】

シーズン開幕戦まで3週間を切った大分トリニータ。9日間の鹿児島キャンプを終え、下平隆宏監督は「前半はハードな練習となったが、選手が一体感を持って、自分たちでチームを作る意識を持って取り組んでくれた。2試合のトレーニングマッチを組んだが、その成果が結果として出た」と振り返った。昨季1年間を戦った確かなベースはあるものの、「選手はどこか、やらされている感があり、うまくいかなかったときは戦術のせいにしていた」と話していた昨年に比べ、「今季は試合中にベンチの指示を待つようなことはない」という。指揮官の目指す理想形に近づいている。

それは28日のジュビロ磐田とのトレーニングマッチ(45分×3本)で見てとれた。選手個々の質では上回る相手を向こうに回し、1本目で大分は、押し込まれながらもゼロでしのぎきる。中盤でプレーした野村直輝は手応えがあったようだ。「失点がなかったのは良かった。(試合の流れが)良いときもあれば悪いときもある中で耐えられるようになった。攻撃はボールを持たされている感じだったが、前線の選手に当てて次のこぼれ球を狙う意識が共有できていた」。そう話すように、自分たちのリズムが生まれない時間帯は失点しないことを念頭に置き、攻撃の連係には共通意識の高さが感じられた。

好調を維持する野村直輝

前線と中盤の選手が入れ替わった2本目は、前線から相手のボール保持者を追い込む守備がハマり、1年目のルーキー保田堅心、佐藤丈晟が躍動する。保田はボールを奪うと、そのままゴール前まで上がり決定機を演出する。佐藤も臆することなく、ボールを持てば仕掛け、セットプレーではキッカーとなり精度の高いボールを蹴り込んだ。ルーキーの活躍に刺激された藤本一輝は「負けてなるものか」と2得点し、新加入の安藤智哉はセットプレーから得意のヘディングでゴールし猛アピール。下平監督は「(保田と佐藤の)2人の成長の勢いはすごかったが、選手みんなが輝いて見えた。自分たちで考えてプレーし、それぞれの特徴を出してくれた。(選手選考が)難しくなるのはうれしい収穫」と喜んだ。

危惧されていた最終ラインも、高さのある安藤やデルランの新戦力が安定したパフォーマンスを披露し、けがから復帰した刀根亮輔は、ゴール前の体を張った闘志あふれるプレーで得点を許さなかった。下平監督は「キャンプで一つの形が見えてきた」と満足の様子。攻守両面で今季のカラーが打ち出されたサッカーは、残された時間の中でより完成度を高めていくことになるが、すべては一体感なくして成り立たない。そのために指揮官は、今季のキーワードを「共創」とした。選手へのアプローチは、自分から答えを言わず、選手にしゃべらせ、考えさせるようにしている。「ピッチで起こる変化に、選手主導で対応できるチーム作り」は順調に進んでいる。

磐田戦で2得点した藤本一輝

(柚野真也)

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