貴重な窯跡「崩壊が進み緊急事態」 3Dデータで後世へ伝える 専門家が調査 広島の港町・鞆  

広島県福山市鞆町の特産「保命酒」ゆかりの窯跡を後世につなげようと、専門家が調査をしました。

福山市鞆町の「鞆皿山窯跡」を訪れたのは、立命館大学や早稲田大学の考古学などの専門家です。窯跡の現状を3Dデータとして残すため、撮影などをしました。

立命館大学 木立雅朗 教授
「だいぶ、すき間も空いている。向こうの方はまだいいんですけど」

この窯跡は、江戸時代終わりから昭和初期にかけて利用されていたもので、地元の特産品「保命酒」のとっくりなどが作られていました。全長約51メートル、幅は最大8.5メートルほどで、火をたく「胴木間(どうぎま)」と、焼く部屋が11室ある「登り窯」です。当時の窯跡としては、現存する中で最大規模とされていますが、保存活動が難航するなどして自然劣化が進んでいます。

立命館大学 木立雅朗 教授
「緊急事態であると。どんどん崩壊が進んでいる。生活に密着したさまざまなものを作っていたので、産業複合であり、文化複合であるということで鞆に本当にふさわしい遺跡だと思うんです」

貴重な窯跡を後世に伝えようと、調査は、地元協力のもと計画されました。撮影する写真は約3000枚。精度を上げるため、GPSを活用した測定も行われ、大きさや傾きなど窯跡の全体像から細部まで記録しました。

太田家住宅を守る会(窯跡の保存活動に従事) 岡本純夫 さん
「幸い、ある程度、形のわかる良い状態ではあるから、一度きちんと調査して次に向けて残していける、周辺を含めて知ってもらえる状況になればいいなと」

完成した3Dデータは、福山市鞆の浦歴史民俗資料館で開催される秋の企画展での公開や、地域学習の素材など幅広く利用される予定です。

© 株式会社中国放送