公立中学校の部活動を民間団体などに委ねていく地域移行が、2023年度から段階的に始まる。教員の過重労働や少子化への対応策で、地域の人材を活用し子どもたちの活動を支えていくのが狙いだが、生徒の「受け皿」不足や財源への根強い懸念も。山積する課題を前に各自治体が手をこまねく中、横浜市教育委員会は民間企業への委託事業に光明を見いだしている。
1月の日曜日。市立鴨志田中学校の体育館で男子バスケットボール部がゲーム形式の練習に励んでいた。そこに教員の姿はない。「先生」と呼ばれるのは生徒と共にコートを走り、パスを供給する男性だ。
市教委は昨年度から市立中学校の3校6部活で、休日の指導を民間企業に委託している。鴨志田中に指導者を派遣している「リーフラス」はスポーツスクールを運営し、全国で部活動支援の実績がある。
男子バスケットボールとバドミントンを教える石川智也さん(27)は、「当然、最初は遠慮もあるが、くだけてくると冗談も言い合える。親しみやすさを大事にしながら、指導効果も得られるよう意識している」と話す。顧問との情報共有は密だ。練習内容や出欠状況といった連絡は欠かさず、試合に向けたフォーメーションなどのリクエストもあるという。
子どもたちにとっては“指導のプロ”から学ぶかけがえのない時間。平日はシュートやドリブルなど個人練習を中心とするだけに、経験者の石川さんの下で実践的な練習を通じて成長を実感しているという。
主将の河村聡史さん(2年)は「実際に動きを見せてくれて耳だけではなく、目にも訴えかけてくれる。シュートの打ち方など、具体的なところも示してくれる」。副主将の山口遼太さん(同)も「いい先生がいて、いい環境があるのはレベルアップにつながる。週に1回、その3時間が大事だからみんなが集中してできている」と笑みを浮かべた。