<南風>発達障がいは増えたのか

 私は精神疾患や発達障がいがある若者に対して就労支援や社会生活支援を行っている。時折、「発達障がいがある人って増えたの?」と聞かれることがある。

 発達障がいの一つに自閉スペクトラム症(ASD)というのがある。2013年にDSMという診断マニュアルが改正され、その際にスペクトラム(連続体)という概念が用いられた。

 この連続体とは、発達障がいの特性はグラデーションや強弱があり、明確な線引きで分けられるものではなく、本人が置かれている環境によっても変化するという考え方である。

 自閉スペクトラム症の特性の一つ、「こだわり」を例に挙げると、軽いこだわりであれば趣味となるだろう。キャンプグッズやランニングウエアなど、どこのブランドでも関係ない人もいれば、同じブランドで統一する人もいるだろう。これも軽いこだわりである。

 中程度のこだわりとなると、職人や専門職が挙げられる。料理人などで食材の鮮度が落ちると商品としては絶対に提供しないとか、器や盛り付け方にもこだわるなどである。特性のグラデーションや強弱とは、そうした誰もが持ち合わせている特性(こだわり)が、社会生活において適応するかどうかである。

 こだわりが強くとも、それを強みとして生かせる職業や環境にいることで発達障がいという診断を受けずに済むことができる。逆に、「周りと同じ」「普通」「一般的」を強いられる環境であれば、軽いこだわりであったとしても、社会生活において不適応を起こし、診断が必要となる場合もあるだろう。

 「増えたのか?」という問いに対して、本人の置かれている環境が多様な価値観や生き方に対して寛容であれば少なくなるだろうし、「普通だったら」という同調圧力が上がると、きっと増え続けるだろう。

(神谷牧人、アソシア代表)

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