対馬―釜山航路 25日再開へ準備着々 今週末便は満席 島の経済復活はまだ先?

チェックインカウンターの準備をする国際ライン対馬の山口課長=対馬市、比田勝港国際ターミナル

 対馬北部・比田勝と、韓国・釜山を結ぶ国際定期航路が25日、約3年ぶりに再開される。当面は週末中心の運航で乗客は最大100人と条件付きだが、運航会社などによると、釜山を出発する今週末の便は既に満席。地元では着々と受け入れ準備が進むが、本格的な島の経済復活は「まだ先」との声も聞かれる。
 22日午後。比田勝港国際ターミナルに船会社のスタッフらが慌ただしく出入りしていた。「再開を喜ぶ暇がないほどバタバタしている」と話すのは代理店業務などを展開する海運業「国際ライン対馬」の山口正光課長。再開を3日後に控え、ターミナル利用客の動線確認やカウンターの準備業務などに追われた。
 休止前の2018年には過去最多約41万人の韓国人が入国した同航路。飲食店はいつも韓国人観光客が列をつくり、島の経済を盛り上げた。再開後は、韓国の2社が土日に1往復ずつ高速船を運航。対馬市などはコロナの影響を見極めながら、運航頻度や人数制限の見直しを進める方針だ。
 ターミナル近くの天瀬電機は店舗の一部を改修し16年からカフェを営業。航路休止で休業していたが、25日から再開する。商品の納入や陳列で慌ただしいという女性店主は「元気がなかった対馬のためになる」と期待を寄せる。不景気で島を離れた人もいるといい、「他の店では人手不足との声も聞く。観光客が増えれば、うちも人を増やすことを考えないと」と話した。
 レンタカー業を手がける今村純一さん(48)によると、韓国人観光客が多かった時期は週末になると、車両約10台を貸し出しっぱなしの状態だった。ただ、航路再開については「最初は団体客が中心と聞いている。個人客がメインのレンタカーや小規模の飲食店が潤うのは、条件緩和後の夏ぐらいになるのでは」と冷静に見る。
 その上で、許容量を上回る観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」で、地元住民の生活に支障が出る事態を懸念。「対馬が観光地として成熟するためには経済活動と生活のバランスを考え、対策を考えないといけない」と力を込めた。


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