“ベッドタウン”でも人口減傾向に 長与、時津 一部団地の高齢化が顕著

高齢化が進む長与ニュータウン=長与町

 県都長崎市に接する西彼長与、時津両町。「平成の大合併」には賛同せず、ともに単独路線を歩んでいる。ベッドタウンとして住宅地を増やし発展してきたが、両町とも人口の伸びはストップ。高度経済成長期ごろに造成された一部の団地では、高齢化も顕著になっている。
 両町とも面積は県内自治体で屈指の狭さながら、人口は長与が4万311人、時津が2万9476人(ともに1月末現在)。人口密度は時津、長与が県内1、2位を占める。
 両町は財政面も“豊か”だ。財源の余裕度を示す財政力指数は県内で時津が1位、長与が2位。両町内では、区画整理事業による宅地や道路整備のほか、家族向けマンション建設なども進む。長崎市へのアクセスの良さや優れた子育て・教育環境などを掲げ、転入者の受け入れを待つ。
 ただそんな両町でも、ここ数年で人口は減少傾向に転じた。特に長与町は、総務省が公表した2022年の日本人の人口移動報告によると、転出超過が428人。県内では長崎、佐世保両市に続き3位だった。町は「分析はこれから」とするが、10代後半から20代の若い世代の町外流出は既に進んでいる。
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 「独居のお年寄りも増え、買い物に困るという相談もよく受ける」。そうこぼすのは長与町最大の団地、長与ニュータウンの西区自治会長、古谷東明さん(75)。同区の65歳以上の割合(高齢化率)は21年度末現在51.9%で、町内自治会別でもっとも高い。町平均27.8%の倍ほどだ。
 長与ニュータウンは1970年代前半に開発され、町外から移り住んできた住民も多い。古谷さんも長崎市内から来た一人で、約40年この地区の推移を見てきた。往時と比べると「子どもたちが減り地域に活気がなくなった」。住む人が居なくなり庭木が生い茂る家も増え「防犯面でも気になる」と不安を口にする。
 長与ニュータウン内には現在、大きな商店はなく最寄りのスーパーまでは徒歩約20分。急な坂道が続くため、車を使わない住民は買い物にも苦労する。以前は地元漁協の移動販売もあったが、収益につながらなかったのか撤退した。スーパーの買い物送迎車なども運行しているが「使える回数に限りがあり、これもいつなくなるか分からない」(80代女性)との声も聞かれる。
 「活気は取り戻したいがもう昔のようににぎやかになるわけではない。いかに減退させず維持していくかが課題」と古谷さんは語る。自治会としても住民向けの「スマホ講習会」などのほか、春には数年ぶりの花見を予定するなど、活気作りに腐心。高齢化した団地の問題は山積みだが「町にお願いしても実現が難しいことも多い。まずは住民同士できるところから始めたい」と前を見据える。


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