海難事故時の死因究明 迅速化へ 全国初、長崎大と海保が検視協定

協定を結んだ河野学長(左)と島谷本部長=長崎大

 昨年4月の北海道・知床半島沖の観光船沈没事故を受け、長崎大と第7管区海上保安本部は27日、検視や身元特定に関する協定を結んだ。海難などで同時に複数の死者が発生した場合に備え、検視に必要な施設や設備の使用、医師の派遣などで協力する。
 大学と海上保安庁が遺体の取り扱いに関する協定を結ぶのは全国で初めて。必要な手続きを簡略化し、海上保安官による検視や、身元の特定などを円滑に実施する狙いがある。
 これまで海難事故発生時は、現場近くで検視を実施し、同大が死因を究明する検案医を派遣していた。協定により同大に遺体を運ぶことで、遺体用のコンピューター断層撮影装置(CT)や、遺体安置のための冷蔵、冷凍設備など同大医・歯学部の充実した設備を使うことができ、死因究明や身元特定を迅速に実施できるという。
 長崎大で締結式があり、河野茂学長と第7管区海上保安部の島谷邦博本部長が締結書に署名した。河野学長は、助教や院生も「複数同時検視」を経験できるとし「今後予想される南海トラフ地震や首都直下型地震などでの派遣に容易に対応することも可能になると思う」と教育の観点からの意義も述べた。

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