子ども1人を育てるのにかかるお金、もらえるお金はいくらになる?

このところ、児童手当の給付制限撤廃や東京都独自の児童給付金など、少子化対策が大きな話題となっています。では、実際に子どもを成人まで育てるのにいくらお金がかかるのでしょうか。反対に児童手当、高校無償化で、どの程度の給付があるかを紹介します。


少子化対策が大きな話題に

1970年代は200万人を超えたこともある出生数ですが、2022年は77万人(推計)。過去最低を更新するのは確実と見られています。2021年の約81万人と比べても、5%程度減っています。経済成長や社会の活力の低下が危惧されるなか、岸田首相は「異次元の少子化対策」を打ち出し、経済支援・保育支援・働き方改革を柱とした議論を進めています。特に話題になっているのは、後述する児童手当の所得制限撤廃です。

政府に先んじて、東京都も具体的な対策を公表しました。東京都は都内の18歳以下の子どもに対して月5,000円を給付する方針を決定。2024年1月に2023年度分の6万円が一括で給付される見通しです。しかも、この月5,000円には所得制限を設けないため、子育て世帯であれば等しく給付が受けられます。また、第2子の保育料の無償化、健康な女性の卵子凍結保存の助成制度なども打ち出しています。東京都は、これらの対策のために、新年度予算案に1.6兆円を盛り込むことにしています。

また、東京都と連動して東京23区も手厚い子育て支援策を公表しています。以下がその一例です。

・足立区:大学生向けの奨学金を貸与型から給付型に切り替え。6年間で最大3,600万円(私立大医学部進学の場合)が給付される。対象は世帯年収800万円以下(4人世帯の場合)

・江東区:18歳以下の子育て世帯に対して、子ども1人あたり3万円の電子クーポンを支給。所得制限なし

・世田谷区:第3子から支給していた出産費用助成を「第1子から一律5万円」の支給に拡大。所得制限なし

・新宿区:新小学1年生に1人5万円、中学1年生に1人10万円を支給。公立私立を問わない

・目黒区:新生児1人につき2万円の祝い金を創設、18歳以下に1万円を給付

・品川区・中央区など:区立小中学校の給食費の無償化

児童手当、高校無償化で給付される金額は?

では、「児童手当」と「高校無償化」ではどの程度給付されるのかを見ていきます。

●「児童手当」の金額は?
児童手当は、中学生以下(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもがいる世帯に対して給付されるお金です。児童手当でもらえる金額は、子ども1人につき以下のとおりです。

・3歳未満:月額1万5,000円
・3歳以上小学校修了前:月額1万円(第3子以降は月額1万5,000円)
・中学生:月額1万円

しかし児童手当には、子どもを養育している人の扶養親族等の数に応じて、所得制限限度額・所得上限限度額が決まっています。子どもを養育している人の所得が所得制限限度額以上になると、児童手当は一律で月額5,000円(特例給付)に減少します。さらに、子どもを養育している人の所得が所得上限限度額以上になると、児童手当は支給されなくなります。

たとえば、扶養親族が3人(児童2人と年収103万円以下の配偶者)の場合、所得制限限度額は736万円(収入額の目安960万円)、所得上限限度額は972万円(収入額の目安1,200万円)です。

●「高校無償化」の金額は?
高校無償化は、正式には「高等学校等就学支援金制度」と呼ばれる制度です。公立高校に通う生徒には11万8,800円、私立高校に通う生徒には39万6,000円を授業料として支給します。あくまで授業料ですので、制服代や部活動の費用、修学旅行代などはかかりますが、家計の大きな助けになる制度です。

しかし、高校無償化にも所得制限があります。

高校無償化の所得制限も扶養親族の数に応じて異なるのですが、たとえば両親の一方が働いていて子2人(高校生・中学生以下)、扶養控除対象者が1人の場合、目安の年収が約590万円以上になると39万6,000円の支給が受けられなくなります。さらに、目安の年収が約910万円以上となると11万8,800円の支給も受けられなくなります。

そもそも、子どもを成人まで育てるのにいくらお金がかかる?

教育費は「人生の三大資金」のひとつに挙げられますが、実際、どのくらいかかるのでしょうか。それをまとめたのが次の表です。

文部科学省「子供の学習費調査」(2021年)には、子供が幼稚園から高校まで公立・私立に通った場合の学習費がまとめられています。すべて公立に通った場合で577万円、すべて私立だと1,840万円となっています。

ただし、このデータには中学受験や大学の費用が含まれていません。中学受験をするとなると、中学受験塾の費用や受験にかかる費用などもかかります。ここではそれを300万円と見積もりました。大学は文部科学省の「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(2021年)より、国立・私立文系・私立理系に4年間通った場合の入学料・授業料・施設設備費の合計額を記載しています。

以上の合計額を表の「合計」欄にまとめています。ほとんどのパターンで1,000万円を超えていますし、私立中に通うとなると600万円近い上乗せが必要になることがわかります。

さらに、大学には下宿して通う人もいるでしょう。全国大学生協連「第57回学生生活実態調査」(2022年)によると、より毎月の下宿生の生活費は12万5280円とのこと。「(下宿時合計)」の欄には、「合計」に大学4年間を下宿して通った場合の4年分の生活費を加えた合計額を示しています。4年間の下宿費用は、実に約600万円にのぼります。

教育格差が貧乏格差になるとも言われる

内閣府の資料「子供の貧困対策〜現状と今後の地域での支援〜」(2019年)には、学歴が高くなるほど高所得の仕事に就いている割合が高くなることが示されています。

何より、“良い”教育にはお金がかかるものです。

子育て世帯の税負担の軽減策は、話題の「N分N乗方式」も一つの方法です。N分N乗方式は、世帯の所得を合算した総収入額を世帯の人数で割って、その金額をもとに納税額を決める方法。子どもなど扶養家族が多いほど世帯の所得税の負担が軽減されることから、少子化対策になると考えられています。

少子化対策の議論は継続していますが、異次元の少子化対策に期待したいところです。

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