市長選と共闘の動き 佐世保市・北松浦郡区(定数9)<県議選2023 直前情勢②>

 現職8人、新人3人の計11人が名乗りを上げている。長崎県議選から間もなく佐世保市長選が控えており、双方の立候補予定者が共闘する動きを見せている。
 2月25日。市長選に出馬する市議、橋之口裕太の事務所開きが市内であった。自民県連の推薦証が掲示され、選挙区の自民県議5人全員の関係者が顔を見せた。
 田中愛国と溝口芙美雄は議長経験を持つベテラン組。山下博史は若手経営者らの人脈があり再選を目指す。市中心部を拠点に5選を期す外間雅広と、旧北松出身で4期目に挑む吉村洋は、それぞれ代理人を出席させた。市長選と県議選のセットで「挙党態勢」を印象付けた。
 ところが翌26日、関係者に驚きが広がる。市長選で橋之口と争う前県議、宮島大典の事務所開きに外間が現れ、激励のあいさつに立った。
 昨年2月の知事選で、外間は宮島と協力。自民県連推薦の大石賢吾を支え、初当選につなげた。一方、ほかの自民県議は山下が「中立」、田中、溝口、吉村が当時現職知事だった中村法道の支援に回った。
 外間は宮島を激励した理由を「知事選で自民が(推薦を)機関決定した候補を応援していただいた。お礼の義を果たすため」と説明する。ただ自民関係者は「宮島票を狙っている」とみる。保守から革新まで幅広い支持層を持つ宮島は、前回の県議選でトップ当選。得票数約2万3千は選挙区史上最多だった。
 宮島の事務所開きでは、立憲民主県連代表の山田朋子も来賓席に座った。かつては旧民主党などで共に行動。自らの県政報告会にも宮島を招き、5期目に向け一緒に戦う姿勢を見せる。
 新人は佐世保重工(SSK)労組出身で国民民主の古川洋介と、若さをアピールする無所属の湊亮太が宮島の事務所に駆けつけた。宮島は前回の県議選で、同労組出身の県議から議席を引き継いだ経緯があり、同労組は「預けた票を古川に返してもらう」。湊は大石の元私設秘書で、知事選を通じて宮島と関係を深めた。
 一方、創価学会票を基盤とする公明の宮本法広は、市長選と絡んだ動きを見せていない。今後示される党の方針に従うとみられる。
 橋之口と宮島は、石木ダム建設と、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を「推進」する立場。これらに慎重姿勢や反対を示す社民と共産は、市長選と距離を置く。社民県連副代表の堤典子は、出身母体の県教組などの支援を受け再選を狙う。共産県北部地区委員長で新人の石川悟は3度目の県議選に挑む。
 維新は20代女性を擁立する予定だったが取りやめた。
 市長選は朝長則男が5選不出馬を表明し、16年ぶりに新しいリーダーを選ぶだけに激戦が予想される。「高まる熱気を生かさない手はない」「関わり過ぎると敵も増える」。県議選に臨む各陣営は、市長選にどこまで立ち入るべきか見極めつつ準備を急ぐ。
     =文中敬称略=     

◎立候補予定者

▼佐世保市・北松浦郡区
田中 愛国 78 自現(7)
溝口芙美雄 75 自現(5)
外間 雅広 64 自現(4)
吉村  洋 66 自現(3)
山下 博史 48 自現(1)
山田 朋子 50 立現(4)
宮本 法広 50 公現(2)
石川  悟 70 共新
古川 洋介 40 国新
堤  典子 65 社現(1)
湊  亮太 37 無新

© 株式会社長崎新聞社