心で「ごめん」を

 作者は小学2年生という。〈「ごめん」って ぼくの口はあかないんだ 口に力が入って。手に力を入れて書くよ。ごめん〉。6年前、日本一短い手紙のコンクール「一筆啓上賞」の大賞に、この一編「ママへ」が選ばれた▲「ごめん」と言えない子どもは負けん気が強そうで、少しかわいい。それは小さい子どもに限った話で、青年や大人がこうだと、人は渋面を浮かべるしかない▲回転ずしチェーンの名古屋市内の店で、しょうゆ差しをなめる様子を撮影したとして、21歳の男ら3人が逮捕された。やらかした直後に「深く反省しています」と動画を投稿していたという▲「反省」というが、心の内は「ごめんなさい」よりも「やばい、まずい」ではなかったか。店内で迷惑行為をする動画を流され、損害を受けたとして、店側が被害届を出すことが近ごろ増えた。責めを逃れる「反省の弁」と取られても仕方がない▲「迷惑なまねはよしなさい」ではなく「下品な、汚いことはやめなさい」でもない。そんな常識やモラルを持ち出しても通じないから、今後は「犯罪はよしなさい。逮捕されるよ」と言うしかない。とうとうここまで…と寂しい気もする▲21歳。まだまだ若い。口に出す前に、手で書く前に、まずは心の底で「ごめん」と唱えなければ、何も変わるまい。(徹)

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