42歳で高齢出産したキャリア妻の悩み「夫は転勤族。家は買わないほうがいい?買うとしたら予算はどう決める?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、42歳、会社員の女性。会社員の夫(48)との間に、子どもを授かった相談者。マイホームを買いたいものの、夫は転勤族で同居できるか不明。いくらの物件を購入すべき?ローンの組み方はどうする?FPの鈴木さや子氏がお答えします。


3年前に夫と結婚。週末婚を続けてきましたが、先日高齢出産で子供が誕生、産休中です(一年後に復職予定)夫は現在海外赴任中、任期は2〜3年ですが、転勤族のため、この先も同居できるか分かりません。

私は転勤がない職場なので、子どものためにもそろそろ家族の拠点となる住宅を購入したいと考えています。賃貸では音なども気になりますし、気に入った家で落ち着いて子育てをしたいという私の希望からで、夫も基本的には賛成です。

夫の年収は1,500万円(海外手当400万円含)、私の年収は1,100万円(1年後に復職予定)ありますが、2拠点生活であること、これから子どもの教育費用などかかってくること、また年齢的なことから、いくらぐらいの物件を購入するのか、もしくはしないほうがいいのか迷っています。

注:下記の金額は産休前の世帯の収入と支出です。夫の支出内訳は分かりませんが、お互い支出の総額は同じぐらいなので、自分の家計簿を2倍しています。

【相談者プロフィール】

・女性、42歳、会社員

・夫:48歳(別居) ・子ども:0歳

・お住まいの都道府県:近畿地方

・毎月の世帯の手取り金額:100万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:550万円

・毎月の世帯の支出の目安:65万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:20万円

・食費:12万円

・水道光熱費:4万円

・保険料:1万円

・通信費:2万円

・お小遣い:10万円

・その他:服飾費8万円、交際費5万円、日用品3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:35万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:250万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,900万円

・現在の投資総額:1,500万円

・現在の負債総額:0円

鈴木:0歳のお子様がいらっしゃる育休中のママから、住宅購入のご相談です。お子様の教育費や年齢的なことから、購入して良いのか、またいくらなら大丈夫なのか悩んでいるとのことです。結論からお伝えすると、今後の収入が大きく変わらなければ、ご相談者様の資産状況からは購入可能と言えます。物件予算を考えるうえで、大事なポイントをお伝えします。

住宅ローンは「無理なく返し続けられる金額」が鉄則

住宅ローンは「無理なく返し続けられる金額」で組むのが鉄則です。返している間に、色々なライフイベントが発生したり、想定外の出来事があったりしても、原則は同じ金額を返し続けるため「無理なく」が大切なのです。

最近はペアローンを組んで夫婦で返済する人も少なくないですが、中には、子育てと仕事の両立が難しく、どちらかが減収を伴う転職または仕事をやめるなどで、返済継続が困難になるケースもあるようです。

ご相談者の場合、育休明けには夫婦の収入は同程度となる見込みですが、転勤がない妻が子育ての中心になることを考えると、働き方の見直しなどがないとは言えません。もしかすると、夫も今後は転職のない働き方をしたいなど希望があるかもしれません。今後のキャリアや家庭での役割について、家を買う前にしっかりと夫婦で話し合いをして、長い目でそれぞれの収入や支出がどうなりそうか共有しておくことが大切です。

話し合いを十分にした上で、夫もしくは妻単独でローンを組むか、ペアローンにするか決めましょう。ペアローンとする場合でも、どちらかは返済期間を短くするなど、余裕をもって返し続けられる方法を模索してください。

想定する教育進路によっても物件予算は変わる

これから大学卒業まで22年間かかり続ける教育費は、進路によって大きく異なるため、どのくらい教育費が変わるか、知っておきましょう。

たとえば、小学校から大学まですべて私立とした場合、学校にもよりますが、平均値では総額2,500万円以上かかります。もし高校と大学だけが私立となると総額約1,500万円と、1,000万円もの差が生じます。ご参考までに高校までのかかる教育費(習い事含む)を月額でみてみましょう。

<小学校~高校 月額教育費の目安>

小学校:私立13万8,912円/公立2万9,380円

中学校:私立11万9,696円/公立4万4,900円

高校:私立8万7,870円/公立4万2,748円

現在、毎月の貯蓄が35万円できているため、今の収入水準がこのまま続けば、すべて私立でも問題なく通わせられるでしょう。また、ボーナスの貯蓄も多いため、現在の資産の多くをマイホームの頭金に回したとしても、小学校や中学校を受験するまでに、受験塾の費用200~250万円などの貯蓄は可能でしょう。

また大学費用は、私立理系の場合、4年間合計で778万4,000円、私立文系の場合、662万6,000円、国立の場合は453万6,000円。子どもが自宅外通学となった場合の仕送り平均値は、年間平均95万円、4年間合計で380万円(※出典:令和3年度教育費負担の実態調査結果/日本政策金融公庫)かかります。

大学費用は積み立てをオススメ

大学費用については、今から18年間、積み立てをしていくことおすすめします。なぜならお子様が大学に入学する頃、夫は66歳、妻は60歳と収入が減っている可能性があるからです。仕送りを含めて必要な金額を1,200万円とし、元本だけで考えると月5万6,000円の積み立てをすれば作れます。積み立て投資で平均利回り2%を見込むことができれば、月4万6,000円必要です。

ちなみに保育園については、3歳以降の保育料は所得制限なく実質無償となっているため、大きな心配は不要でしょう。3歳以降はそれまでかかっていた保育料を貯蓄にまわせます。

ここまでの内容をまとめると、ポイントは以下となります。

(1)小学校から私立を考えるのならば、受験に約200万円、小学校は、毎月最大約14万円捻出する必要がある
(2)大学費用のために毎月4万6,000円~5万6,000円の積み立てをしておくと良い
(3)どんな進路を検討したいか夫婦で話し合いをしよう

毎月の返済額はいくらがよい?

海外手当がなくなり育休明けにご記載の収入に戻った場合、私立小学校の教育費や大学費用のための積み立てを考慮しても、赤字にならず貯蓄も可能です。今後の収入水準がご夫妻とも大きく減る予定がないのであれば、世帯全体で現在の住居費負担を超えないよう、ローン設定を考えれば大丈夫です。

現在の住居費は20万円ですので、管理費や修繕積立費用、税金などを考慮すると、毎月の返済額は16万円まで(ペアローンの場合は二人合わせて)にすると良いでしょう。

返済期間はどう考えるか

住宅ローンは最大80歳まで借り入れることは可能です。しかし、一般的に60歳を超えると収入は大きく減ることが多く、できれば65歳くらいまでには完済を目指すことをおすすめしています。現在48歳の夫の場合、最大でも22年間で設定して、繰り上げ返済によって完済を早める計画が良いと思われます。

毎月の返済額を16万円とした場合、借入可能額は次のようになります(元利均等返済の場合)。

【65歳で完済(17年返済)の場合】

固定金利(1.4%)なら2,903万円 / 変動金利(0.4%)なら3,154万円

【70歳で完済(22年返済)の場合】

固定金利(1.4%)なら3,633万円 / 変動金利(0.4%)なら4,042万円

もしペアローンとする場合は、返済期間を同じとすると、二人で分担することになるでしょう。

物件予算はどうやって決めればよい?

物件予算は、前述した借入可能額に頭金を足して諸費用を差し引いた金額となります。

物件予算=借入可能額+頭金―諸費用(※)

ご相談者様の場合、現時点での資産が投資を含めて4,400万円あり、ある程度頭金として充当できそうです。

現在の投資額には手を付けずに、預貯金のうち、必要予備資金として1年分の生活費780万円(65万円×12カ月)を差し引いた2,120万円を頭金として充当してもよいですし、投資資金のうち半分程度を加えても良いでしょう。退職金の有無がわからないのですが、もしないのであれば、投資資金に手をつけないでおくと気が楽かも知れません。

もし2,120万円を頭金とした場合の物件予算は次のように計算できます。(17年返済/1.4%で借り入れ/諸費用6%と仮定)

(借入可能額2,903万円+頭金2,120万円)÷1.06=4,739万円

しばらくは育休中で収入が少し減り、保育園代もかなりかかりますが、食費や服飾費などの支出が大きく変わらなければ、年100万円ほどは貯められるでしょう。お子様が3歳になり、妻の収入が産休前の水準近くに戻れば、毎月の貯蓄は20万円くらいまでに戻ることが想定でき、ボーナスから150万円貯められるとすると年390万円貯蓄できそうですね(大学費用の貯蓄も含めています)。今後の収入が減らないことが前提ですが、現在の資産の多くを頭金に充当して予算を組んでも大丈夫ではないでしょうか。

まずは夫婦で状況を共有しましょう

いかがでしたでしょうか? 今後の働き方や教育プラン、退職金の有無など、まずはご夫婦で状況や価値観を共有して、今後の収入水準がどう変わるか、ライフプランを話し合ってみてくださいね。そのうえで、今後の生活水準が膨らまないように気を付け、なにより元気に働き続けられるよう健康に留意して、楽しく子育てしていってくださいね!そして、予算と価値観に合う素敵な物件に出会えるよう祈っています。

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