「セミリタイアしてアジアにプチ移住したい」子育てを終えたシングルマザーの夢は叶う?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、52歳、看護師の女性。シングルマザーとして子育てを終えた相談者。今後はセミリタイアをして、アジアプチ移住生活を実現したいという夢をもっていますが、実現可能でしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。


52歳、シングルマザーの看護師です。

息子は独り立ちしており、娘はワーキングホリデーに行っていて、来年帰ってきて、また一緒に暮らします。

やりたい事があり、58歳くらいにセミリタイアしたいですが可能か知りたいです。やりたい事とは、マレーシアや、タイにプチ移住(3カ月〜半年くらい)をすることです。

セミリタイア後は60歳まで月12万円、65歳まで月8万円程度になるよう働こうと考えています。仕事の状況は、今のクリニックで、今年で10年働いています。1年に4000円ずつ昇給あり。

住居は母のマンションに住んでおり(母は近所に住んでいて一緒に住んでいません)、相続してマンションは受け取る予定です。相続後は、管理費、駐車場で月3万円の支出となります。

【相談者プロフィール】

・女性、52歳、看護師、シングルマザー

・子どもの人数:2人(息子独立、娘ワーキングホリデー中)

・お住まい:親名義のマンション(東海地方)

・毎月の世帯の手取り金額:24万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:80万円

・毎月の世帯の支出の目安:16万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:0円

・食費:5万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:6,000円

・保険料:1万8,000円

・通信費:2万円

・車両費:2万5,000円

・お小遣い:1万円

・その他:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:記載なし

・ボーナスからの貯金額:記載なし

・現在の貯金総額(投資分は含まない):150万円

・現在の投資総額:900万円(投資は、iDeCoとNISA<満額>を含めたものです)

・現在の負債総額:0円

・公的年金8万円、退職金200万円、養老保険満期950万円

飯田:今回は、やりたい事があり、58歳くらいでセミリタイアが可能かを知りたいシングルマザーの相談者様です。セミリタイア後であっても、65歳までは働く予定であり、半年くらい、マレーシアやタイにプチ移住したいという計画をお持ちです。相談者様の海外暮らしは実現するのか、どのようなことに注意して準備していけば良いのかを考えてみます。

現地の情報を収集することから始めましょう

相談者様の場合、漠然とした「やりたい事」というよりも、具体的にマレーシアやタイにプチ移住したいと考えていらっしゃいます。まずは、それらの国がどのような国なのか、外国人が暮らすためには、どのようなことを知っておくと良いのかを確認しておくことが大切です。

マレーシアの場合は?

滞在期間が90日以上のときには、主に「MM2H(Malaysia My Second Home)」ビザ、いわゆるロングステイビザを取得しなければなりません。このビザを取得した場合には、最長で5年(更新可)、年間最低90日以上はマレーシアに滞在することが必要です。

ただし、ビザを発給するためには、150万リンギット(2023年2月27日の相場で4,600万円弱)の預金残高等があることが必要で、そのうちの100万リンギット、日本円にすると3,000万円強をマレーシア国内の定期預金にすることなど、決まりがあります。その他、マレーシア国外で月額4万リンギット、日本円にすると120万円強の収入があることなどが条件になっています。

実は、こちらのビザはコロナ禍で一度発給が停止になり、2021年10月に募集が再開したものの、再開時には条件が厳しく設定されてしまいました。マレーシアは滞在期間90日を超えなければビザなしで滞在が可能になっています。半年にこだわりがないのなら、90日未満の滞在に留めておいた方が良いでしょう。

タイの場合は?

タイの場合、ビザなしで45日間、観光ビザを取得してれば90日間滞在することが可能です。この場合の費用は5,500円です。その他、ロングステイをする人が発給を受けるビザとして、「エリートビザ」があります。

エリートビザの種類は豊富で、滞在期間最長5年のファミリーエクスカーションの場合、入会金80万バーツ(2023年2月27日の相場で300万円強)の入会金が必要になります。入会すると買い物の割引が受けられたり、コールセンターを利用できたりするため、困ったときに相談することも可能です。

ご存知のように、今は円安傾向にあります。そのため、一時的に海外で暮らす場合であっても、今まで以上にお金を準備しておかなければならない状況にあります。

また、ビザの発給要件は頻繁に変わってしまいますので、できるだけ情報は継続して取り続けることが大切です。

プチ移住は条件次第でOK

いずれの国へ行く場合であっても、いわゆるロングステイビザの発給を受けて滞在することは、現実的ではありません。以前はリーズナブルな印象を持っていた人も多いマレーシアですが、難しいと言わざるを得ません。

先ほどもふれていますが、マレーシアならビザなしでも90日を超えなければOKですし、タイなら観光ビザの発給を受けて90日(ビザなし45日)までなら滞在できますので、90日をめどに滞在する計画を立ててはいかがでしょうか?

リタイア後の金銭状況を試算してみる

相談者様の場合、生活費として月額16万円程度が必要になるようですので(マンションの管理費除く)、58歳以降は貯金を増やすことは難しそうです。そのため、58歳までに貯めたお金を基に考えてみましょう。

毎月8万円の貯蓄で6年間(72ヵ月)ですので、576万円貯めることができます。また、ボーナス80万円から50万円を貯蓄したときには、6年間で300万円貯まります。今ある預貯金150万円、投資額900万円、退職金200万円、養老保険950万円のすべてを合計すると、手元に3,076万円貯まっている計算になります。

65歳からの収入は年金8万円、生活費としては、教育費と保険料をのぞいて16.5万円(マンションの管理費含む)となります。この場合は、月額8.5万円を預貯金から引き出さなければなりません。30年間の支出は、3,060万円です。ほぼ収入と等しい状況になっています。

再度計画を練り直してみましょう

以上は、あくまでも厳しめにシミュレーションした結果ですので、ビザなしで滞在を視野に入れて、今一度、どの地域にどれくらい滞在するのかを考えてみてはいかがでしょうか?

日本に帰国する娘さんも家にお金を入れてくれるかもしれませんので、確実に状況は変わってくると思われます。目標を叶えるにはどのようにすれば良いのか、勤続年数を延ばすなど、じっくりと作戦を練ってみてください。「やりたい事」ができるよう、陰ながら応援しています。頑張ってくださいね。

参考:在マレーシア日本国大使館
参考:領事関連情報 | 在タイ日本国大使館ウェブサイト

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