宇都宮工業高は17日、人権教育の一環として、太平洋戦争末期の沖縄県警察部長荒井退造(あらいたいぞう)(宇都宮市出身)らを描いた映画「島守の塔」の上映会を開いた。1、2年生約630人が78年前の沖縄戦の一端に触れ、命の尊厳について考えを巡らせた。
「島守の塔」は、沖縄県で島守と呼ばれる荒井と、共に戦時行政を担った知事島田叡(しまだあきら)らに焦点を当てた作品。生徒たちは約2時間、スクリーンに見入り、看護に尽くす女学生が過酷な運命をたどるシーンなどでは目元を拭う生徒もいた。
荒井を初めて知った2年上吉原将能(かみよしはらまさよし)さん(17)は「軍の側と(荒井ら)住民を守る側の考え方の違いが伝わってきた。逃げれば助かるかもしれないのに、とどまろうとする女学生をすごいと言ってはいけないが、考えさせられた」と語った。
2年古川日向(ふるかわひなた)さん(17)は「命を国にささげることと、(島田や荒井が訴える)生きることは反対のことだが、願いには共通性を感じた」と受け止めた。
県内高校での上映会は荒井の母校宇都宮高に続き2校目。定年を迎える宇都宮工業高の菅野光広(すがのみつひろ)校長(60)は2015年、本県で荒井の顕彰が本格化した当時は真岡工業高教頭で、校長らとともに荒井を教育に生かす活動に力を注いだ。
上映会では「沖縄県民のため、沖縄のために尽くした島田と荒井のように、人のため社会のために何ができるかを、ものづくりやこれからの生活の中で考えてほしい」と言葉を贈った。