〈激戦地ルポ 2023長崎県議選・1〉西海市区 確執 票を見えにくく

第一声を上げる武宮候補=西海市大瀬戸町(左)、出陣式であいさつする瀬川候補=西海市西彼町

 12年ぶりの選挙戦は、確執やさまざまな思惑を背景に激しさを増している。
 「私は一体、誰と戦ってるんだ」。告示日の3月31日、長崎県西海市区の自民現職、瀬川光之候補は地元西彼町で開いた出陣式でこう、けん制した。念頭にあるのは相手候補ではなく、その後ろにいる2人の市長経験者だった。
 山下純一郎元市長は瀬川候補にとって「師匠」(市議ら)だが、一昨年の衆院選を巡る対応で決別。田中隆一前市長は「もともと反目」(同)だった。5期20年、党県連幹事長や県議会議長を務め、市の発展に尽くしてきたと自負する瀬川候補だが、相手陣営からは「市のために何をしてくれたのか」と批判を浴びる。
 自民系市議16人の大半が支え、100を超える各種団体・企業が推薦。市全域で組織固めを急ぐが、後援会の高齢化は否めず、久々の選挙戦で一枚岩になれていない。そんな中、告示日夜に大石賢吾知事が応援に駆け付け、陣営は「心強い」と意気を上げた。
 3期連続の“無風”がささやかれていた昨秋、名乗りを上げた無所属新人の武宮雄志候補。政治経験はなく、市民の間では、ほぼ無名の存在だった。しかも相手はベテラン。周囲には「思いは分かるが、まずは市議になってからでは」と制する声もあった。
 市商工会青年部などさまざまな縁を頼りに草の根運動を展開し、名前と顔を売り込み。世代交代を訴え、西海町と西彼町を主戦場に支持拡大を図ってきた。地元大瀬戸町で迎えた3月25日の後援会総決起大会。大衆の前で初めて熱弁を振るった武宮候補は「盛会だった」と笑顔で手応えを語ってみせた。
 一方、陰日なたで武宮候補をそろって支える市長経験者の姿は、市民には「異様な光景」に映る。「2人が推すなら私も」「かつて(市長選で)激戦を繰り広げたのにおかしい」。賛否が入り混じり、票の行方を見えにくくしている。
 県議選は5選挙区が無投票となり、残る11選挙区で計57人の候補者が9日の投票日に向け、争っている。特に激しい戦いを繰り広げる5選挙区に注目した。

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