〈激戦地ルポ 2023長崎県議選・4〉佐世保市・北松浦郡区 新人参戦「紙一重の差」

個人演説会で気勢を上げる候補者(左)と支援者=佐世保市内(写真は一部加工)

 前回と同じ11人が出馬。初めて参戦した新人候補の実力が読みにくく、各陣営は「油断すれば足をすくわれる。少数激戦だ」と口をそろえる。
 「私の足元で知事の元秘書が出た。差し金でしょうかね」。3月31日の告示日、佐世保市南部を地盤とする自民現職の田中愛国候補は出陣式で対抗心をあらわにした。
 相手は同じ南部に選挙事務所を構える無所属新人の湊亮太候補。大石賢吾知事の元私設秘書で、38歳の新鮮さを売り込む。現職5人を公認した自民から推薦も得た。
 これにより保守票の流れが複雑になった。過去に推薦を含む自民系が6人当選したケースはなく、現職の危機感は強い。
 知名度が不足する湊候補は、告示前から市中心部や北松地区にもポスターを張るなど手を広げてきた。市中心部を拠点とする外間雅広候補は「6人目の『壁』は高い。票を食い合えば共倒れする」と危ぐ。北松地区で長年活動してきた吉村洋候補の陣営は「姑息(こそく)な動き」とけん制する。
 市北部の相浦地区に浸透する溝口芙美雄候補も警戒し、漁業票など足場を固める。40代の若さを武器にしてきた山下博史候補は、新人候補を意識してか、「経験」を前面に出して支持を訴える。
 前回は佐世保重工労組出身の国民民主県議の後を継ぐ形で、保守系の元衆院議員が出馬。過去最多の約2万3千票を集めてトップ当選し、今回は市長選に挑む。
 このため国民は同労組出身の新人、古川洋介候補を擁立した。1日の演説会で応援弁士は「後釜ができた」とつながりを強調。ただ、陣営関係者は「顔が知られていない新人にどれほど票が入るのか単純には計算できない」と気をもむ。
 元衆院議員の獲得票を巡っては、かつて国政選挙で共闘したリベラル系に一部流れるという観測もある。だが、立憲民主現職の山田朋子候補は演説で「『今回は大丈夫』という、うわさが出て困る。そんな感覚はない」と上滑りを懸念。社民現職の堤典子候補は「元衆院議員は(党派と関係がない)個人的な支持者も多い。頼ってはいけない」とこぼす。
 一方、3選を狙う公明現職の宮本法広候補は前回減らした得票数の回復を目指す。3度目の挑戦となる共産新人の石川悟候補は石木ダム建設の反対を訴えるが、争点としての広がりに欠ける。
 前回の当選ラインは約7千票。今回は票が一定分散し、8千票を超えるとみられる。ある陣営は「当落は紙一重の差だろう」と予想する。

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