長崎県内自然減 初の1万人超え 外国人流入で社会減は改善 2022年の異動人口調査

人口減少が続く長崎市。専門家はIターン推進を強化するよう提言する

 長崎県内の死亡数が出生数を上回る「自然減」が昨年1万1001人となり、人口減少社会になって初めて年間1万人を超えたことが県異動人口調査で分かった。転出数が転入数を上回る「社会減」はやや改善したものの、自然減のペースが上回り、人口減少に歯止めがかからない状況となっている。県人口(今年1月1日現在)は前年比約1万4千人減の127万9871人。
 

本県の出生数・死亡数の推移(2022年)

 昨年の県全体の出生数は8382人、死亡数は1万9383人だった。自然減数は前年比で長崎市3391人減、佐世保市1808人減、諫早市823人減-など全21市町で減少。出生数は前年比で長崎市101人減、佐世保市122人減、諫早市13人減でした。 出生数が伸び悩む中、死亡数は増加傾向で推移している。本県は2002年に自然減に転じ、最近10年間でその数は倍近くに拡大した。

 ◇社会増7市町 明るい材料も

 一方、県全体の社会減は3082人で、前年の半数以下に改善。新型コロナウイルスの水際対策緩和に伴う技能実習生や留学生ら外国人の入国再開が大きな要因とみられる。
 市町別にみると、7市町で転入数が転出数を上回る「社会増」となり、市町村合併で現在の21市町となった10年以降最多。7市町は大村(前年比598人)、諫早(同107人)、西彼時津(同94人)、北松佐々(同94人)、雲仙(同32人)、東彼東彼杵(同4人)、島原(同3人)。外国人を除くと、大村と佐々のみが社会増だった。

県内市町間の異動状況(2022年)

 大村市は自然減を差し引いても、52年連続の人口増となった。西九州新幹線の新大村駅周辺の開発が今後進めば、さらなる増加も見込まれる。2年連続で社会増となった諫早市は、半導体関連の工場拡張・新設など明るい材料がそろい、「企業誘致の効果が見えてくるのはこれから」と期待する。
 雲仙、島原両市が社会増となるのは、いずれも合併以降初めて。農業分野などの技能実習生の受け入れが進むほか、移住政策の「芽が出始めたのでは」など口をそろえる。

 ◇人口ダム機能 県都果たせず

 これらと対照的に長崎市は、大型客船建造で外国人労働者が一時的に増えた15年を除き、社会減が30年近く続く。昨年は1530人。県都として流出の歯止めとなる「人口ダム機能」を果たせていない。市長崎創生推進室は、進学就職に伴う若者の県外流出だけでなく、「家賃の高さなどを理由に、子育て世帯を中心に大村や諫早、時津などに移っている」と分析。新型コロナウイルス禍で企業の支社支店の撤退も影響したとみている。

県外からの転入・転出先の上位10都道府県(2022年)

 社会減は佐世保市(前年比794人)、西彼長与町(同435人)、対馬市(同234人)-と続いた。
 県域を越えた移動は、転入先、転出先ともに福岡県が最多。転入数6183人に対し転出数は9172人に上り、約3千人が同県に流出した。
 県内市町間の異動は、大村市が716人増、諫早市が303人増、佐々町が114人増と交通アクセスや住環境が整った市町に集まる傾向となった。
 国立社会保障・人口問題研究所(東京)の小池司朗・人口構造研究部長は「大村や諫早はベッドタウンとして長崎や佐世保などから一定入ってきているが、長崎、佐世保の人口減に伴い、将来的にその部分も縮小していくだろう」と予測。Uターン推進策も重要としつつ、「出生数が減ることで(いったん県外に出て)戻ってくる可能性の高い若年層も減っていく。今後は大都市圏育ちにターゲットを絞り、長崎の魅力を伝え、Iターンをより強く促していく必要がある」と述べた。
 県異動人口調査は住民基本台帳に基づく数字。総務省が2月に公表した人口移動報告は外国人を除くため数字が異なる。


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