特殊詐欺に壁を高く

 ある実験の結果に驚いたことがある。多くの大学生を対象に、身内や友人のふりをして電話をかけてみた。すると、実に6割がなりすましに気づかなかったという▲身内と称して、カネが要ると電話口でせかし、振り込ませる特殊詐欺は、高齢者が多く狙われる。口車に乗せられやすいため、と決めつけるのはどうやら早計とみられる▲ひょっとしたら電話口でだまされるかも…。大方の人は普段から、そんな想像はしないし、心構えもしていない。「心の隙」を突かれやすいのは、世代を問わないらしい▲介護保険料の払戻金がある、携帯電話料の未払いがある、と電話があり、カネを振り込むよう誘導される。紙面を繰れば、県内でも特殊詐欺の被害が絶えず、手口も巧妙化している▲ならば防御の壁を高くするしかない。NTT西日本、東日本は今月から、70歳以上の人がいる世帯から申し込みがあれば、固定電話にかかった相手の電話番号表示を無料にするようにした。番号を「非通知」でかけてきた相手の着信を拒否するサービスも無料化した▲録音した通話内容を人工知能(AI)が分析し「詐欺かもしれない」と知らせる無料サービスも、期間や人数を限定して始まったという。AIはなるほど「番人」に適役だろう。なにしろ「心の隙」というものがない。(徹)

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