G7閣僚そろい長崎・平和公園で初の献花 一部は原爆資料館訪問 被爆者、対話なく「残念」

14日、平和祈念像前に献花するG7保健大臣ら=長崎市松山町、平和公園(厚生労働省提供)

 被爆地の長崎県長崎市を訪れた先進7カ国(G7)の閣僚らが14日、平和祈念像前に初めて一堂に会して献花、黙とうし、原爆犠牲者を追悼した。一方、全員での長崎原爆資料館の訪問や、被爆者との対話が実現せず、被爆者には落胆も。ただ核保有国を含む一部の閣僚らは同館を非公式に訪れ、「二度と起こらないように」などと決意を示した。
 同市初開催のG7保健相会合。2日目の14日朝、G7と欧州連合(EU)、招待国のインドネシアとベトナムの保健相ら10人が平和公園を訪れる追加日程が、急きょ公表された。
 午後2時20分過ぎ、昼食会場のホテルから専用車で移動した10人が祈念像前の広場に姿を見せた。1列に並んで白い花束を手向け、大石賢吾知事と鈴木史朗市長と共に1分間の黙とう。広場は市民や観光客の立ち入りを禁じる厳戒態勢が敷かれ、滞在時間は10分ほどだった。
 訪問に先立ち会見した加藤勝信厚生労働相は、ロシアのウクライナ侵攻が続く現状を踏まえ「平和に対する希求をさらに強調することにつながる」と平和公園訪問の意義を説明。会合の「非常にタイトなスケジュール」の中で企画したと強調し、全員での資料館訪問や被爆者との面会は難しかった事情をにじませた。
 長崎原爆青年乙女の会の小峰秀孝会長(82)は「被爆者との面談もなく、ただ残念。がっかりした。(平和公園での献花は)建前だけのように感じる」と落胆を隠さない。19日開幕するG7首脳会議(広島サミット)で原爆資料館の見学や被爆者との面会を通じ「78年前に何が起こったか、しっかり見てほしい」と求めた。
 一方、長崎市によると、核兵器を保有するフランスとインドに加え、イタリアとインドネシアの閣僚ら4人が長崎滞在中、資料館を視察した。
 「長崎に来るのに原爆資料館を訪問しないことはありえなかった」。そう強い思いを語ったのは、献花後の午後3時ごろ来館したフランスのアントニー・サン・デニス欧州国際担当次官。

資料や遺品を見学するデニス氏(奥左から3人目)=長崎市平野町、長崎原爆資料館

修学旅行生らに交じって犠牲者の遺品などの展示に見入り、案内役の井上琢治館長に被爆者数を質問するなど、約30分かけて被爆の実相に触れた。デニス氏は「世界から核兵器をなくさなければ」と述べ、井上館長は「長崎を最後の被爆地にという、長崎の強い思いを世界に向け発信してほしい」と応じた。
 14日はインドネシア保健相も来館。12日に訪れたイタリアの保健相は「ここで起こったことをいつまでも忘れない」、インドの保健・家族福祉相は「世界中の全ての問題が話し合いで解決されることを願う」などと記帳した。隣接する国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館を訪れた閣僚もいた。

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