コロナ禍&物価高で外食業界も大きく変化…いまや安く売る時代は終わった?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、外食業界における“コロナ禍・物価高からの復活の鍵”について解説しました。

◆コロナ禍で苦しむ飲食店を救うツールとは?

今回、「外食業界のコロナ禍・物価高からの復活の鍵」について解説するのは、企業に飲食店経営のアドバイスなどを行う"外食・フードデリバリーコンサルタント”として活躍する飲食業界の専門家・堀部太一さん。

まず飲食業界の現状としては、日本フードサービス協会によるコロナ前との売上比を見ると、ファストフード店は好調。117.9%とコロナ禍前よりも上がっています。そして、ファミリーレストランも96.3%。堀部さんは「特に家族で行くようなお店は回復傾向にある」と分析する一方で、居酒屋は58.1%と業種・業態で大きな差があることが窺えます。

この数値に、キャスターの堀潤は「確かに、2次会や3次会、カラオケで朝までみたいな流れは……」と納得し、「今後、(そういったお客の流れは)戻ってくるでしょうか?」と質問します。

堀部さんは「時間帯別で見ると、今は20時以降(の動き)がパタッと止まる。やはり3年間も生活様式が変わると、(元に戻るには)なかなか時間はかかると思う」と見解を示します。

続いては飲食店における"人手不足”について。それは今も変わらず、2023年1月の調査では、正社員の人手不足で困っているお店が60.9%。アルバイトは80.4%となっています。

コロナ禍前、飲食業界には約450万人が従事していたと言われ、その後コロナ禍の大幅売上減で解雇・雇い止めが増加。ようやく需要が戻ってきたものの、現在の従事者はおおよそ370万人と人が足らず、需要に対して追いついていないのが現状です。

そうしたなか、コロナ禍からの復活の鍵として堀部さんが挙げたのは"AI予測”。人材を確保するには賃上げが不可欠で、そのためには"付加価値”が必須と堀部さん。そして、この付加価値というのは「時間短縮」と「売上・粗利の増加」で、そこで活きてくるのが"AI予測”です。

例えば、株式会社Goalsのサービス「HANZO 自動発注」は、これまで熟練社員が考えていた翌日の売上を短時間で正確に算出。さらに、どんな商品がどれぐらい売れるのか細かく予測してくれるため、発注やシフトの自動化だけでなく、光熱費の調整なども容易に。

堀部さんは「ある居酒屋チェーンでは、優秀な店長が1時間以上かけて計算していたものを、今は(AIの活用によって)15分程度でできるようになったので、空いた時間でお客様の対応ができるようになった」とその効果を語ります。

こうしたAIの導入について、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは「AIは受発注の履歴・データがたまることで、より精度が増す。こうしたものが導入されたのはここ数年のことだと思うが、今後さらに進化するにつれてデータもたまり、精度もより正確になり、人手不足が解消する。好循環につながると思う」と大きな期待を寄せます。

◆世界中で起きる物価高…その対策は?

コロナ禍とともに昨今、物価高も世界中で悩みの種となっているなか、その対策に堀部さんが挙げたのは「労働環境の見直し」です。「今までは安い・多い・早いということに対し、どこにしわよせがあったかといえば"人”だった。最低賃金で長時間働いていたが、今後はしっかりと値上げし、適正価格にしていこうという流れになっている」と堀部さん。

例えば、マクドナルドのハンバーガーは、2019年は単品110円。それが今は170円からとなっているものの、2022年の客数は3.2%増。今年1月も伸びており、堀部さんは「今は戦い方が変わった」とし、「値上げをしながら客数も維持する形になってきている。安く売って人に来てもらう方向から、適正価格に変えていこうとしている」と分析します。

では、ここでいう"適正価格”とは何か。堀部さんは1,000店近い飲食店に協力するなかで常に意識しているのが"予算帯”という考え方で、これは例えば予算3,000円の場合に人はどこまで許容できるのかということ。

一般的に予算3,000円であれば、それが2,700円となると安い、一方で3,900円までならある程度許容してもらえて、4,000円を超えるまでは影響が少ないというデータがあるといいます。

こうした線引きが予算帯で、つまり値上げの際にはこの許容範囲内で少しずつ上げていくのが良いと堀部さん。「値上げする場合にいくらあげればいいのか困る方がいるが、この予算帯の中でできるところから上げてほしい」とアドバイスを送ります。

堀部さんの"適正価格”に関する考えに、Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは「確かに予算3,000円の場合、3,900円までは許容できるかも」と納得。「こうした情報を、しっかり届けていくことが大事」と広がることを望みます。

そして、AI予測についても売上だけでなく適正価格まで計算できたり、さらに立地や客層まで考慮できたりすると「面白そう」とさらなる進化に期待します。

堀部さん曰く、AI予測の信頼性は現状「既存店レベルの話で言えば90~95%程度」で人が予測するよりも非常に高い結果が出ているとか。そして、茶山さんが期待する立地や客層別というところはまだまだデータが足りないため、すぐに対応することは難しいものの「中小企業でも導入しやすくなり、多くのデータが集まれば、どこに店を作れば繁盛するのかなど出店戦略にも活きてくると思う」と堀部さん。

飲食業界は長らくデフレスパイラルに苦しんできましたが、コロナ禍を機にAIなどを活用し、賃上げ・適正価格を実現すれば「復調も全然見える」と堀部さんは力を込めます。そして、「今までのいかに安く売るかというところから、高く売り、粗利を得て、内部環境に投資していくという手法に変わってきている」と改めて外食業界の変化について言及しました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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