写真が語る「らんまん」主人公の魅力 植物学者、牧野富太郎の足跡、ユーモアあふれる40枚で紹介

三田市の永澤寺で陽気な一面を見せる牧野富太郎(川崎家提供)

 NHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった植物学者、牧野富太郎(1862~1957年)が、兵庫県内各地で標本を採集したり研究者と親交を重ねたりした足跡を紹介する写真展が、県立人と自然の博物館(三田市弥生が丘6)で開かれている。牧野が三田市内を訪れた際の貴重な写真もあり、同館の鈴木武研究員(61)は「約40枚をまとめて展示するのは初めてでは」と話している。(橋本 薫)

 牧野は高知県出身で、植物学を独学で学んだ。1500種以上の植物に名前を付け、40万点以上の標本を収集した。50代半ばで資金難に陥ったが、神戸市の資産家、池長孟(はじめ)(1891~1955年)の援助を受け、兵庫区の会下山に設立された「池長植物研究所」に滞在し、活動を続けた。

 写真は、牧野と古くから付き合いのあった灘中学・高校教諭川崎正悦の親族が保管しているもの。存在自体は知られ、これまで数枚単位での展示や書籍への引用はあったという。今回、鈴木研究員が神戸市東灘区の川崎家を訪ね、写真の利用許可を得た。同館は、牧野が川崎に宛てた書簡の寄贈も受けている。

 写真は十数点のパネルにまとめ、解説も添えた。牧野が三田市内を訪れていたのは1936年。永澤寺(永沢寺)に宿泊し、立て札を手に踊る陽気な様子や、酒造家で伊丹市長も務めた岡田利兵衛らとの集合写真が目を引く。

 29年に姫路市大塩で撮影された写真は、牧野が命名したことで知られ、「日本一の大群落」と絶賛した兵庫県花「ノジギク」の群生地に座る。同年、高砂市の曽根天満宮では巨大な松の木を背に撮影。31年に宝塚に泊まった際には、女性とダンスを楽しむ姿が収められている。37年に2度訪れた大阪府高槻市の鵜殿では、ヨシに囲まれて笑顔を見せる。

 展示からは、研究成果とともにユニークな人柄が伝わってくる。鈴木研究員は「学者としての実績だけでなく、植物の愛好家を全国に広めた功績は大きい。おしゃべりがうまくおちゃらけた一面もあり、人間的な魅力があった」と評し、「牧野関連の資料が県内各地にまだまだ埋もれているかもしれない」と期待した。

 7月30日まで。午前10時~午後5時。月曜休館(祝日の場合は翌日)。会場には、2005年に同博物館が制作した動画「牧野富太郎と六甲山」もある。同博物館TEL079.559.2001

© 株式会社神戸新聞社