阪急電車沿線のモダンな歩み紹介 小林一三「生誕150年」大阪で記念展 戦前の宝塚歌劇や鉄道事業

神戸(後の上筒井)行き急行電車をPRする1920年ごろのポスター

 小林一三(1873~1957年)といえば、阪急電鉄や宝塚歌劇のほか、百貨店や映画の興行、住宅経営など数々の事業を展開したことで知られる。その生誕150年を記念した展覧会(全4期)が大阪府池田市の逸翁美術館で始まった。第1弾「阪急昭和モダン図鑑」展は鉄道の発展と沿線での娯楽や暮らしがテーマ。戦前のポスターを中心に約130点を展示し、鉄道ファンや宝塚歌劇ファンなど、幅広く関心を集めている。(井原尚基)

 一三は現在の山梨県韮崎市に生まれ、旧三井銀行を経て1907(明治40)年、阪急電鉄の前身に当たる箕面有馬電気軌道の専務取締役に就任。阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創始者として、私鉄経営のビジネスモデルを構築した。

 鉄道事業を紹介するコーナーは、36(昭和11)年の神戸線三宮延伸が一つのヤマ場だ。20(大正9)年の神戸線開通時は、現在の王子公園駅から西に約700メートルのところにあった旧神戸駅(後の上筒井駅)が終着駅だったため、市街地へのアクセスが悲願だった。三宮への乗り入れをPRするポスターには、スピードを強調する「25分」の文字のほか、阪神・淡路大震災で被災した旧神戸阪急ビルに電車が出入りしている様子が描かれ、高揚感と懐かしさを感じる。

 一三が力を入れた娯楽施設の集積地が、劇場のほか球場や動物園もあった宝塚だ。「民衆娯楽の理想郷」と呼ばれた宝塚に焦点を絞った展覧会は7月にも開かれるが、本展でも宝塚歌劇関連のポスターや雑誌を展示。33(昭和8)年9月の花組公演「花詩集」のポスターは、作品名にちなみ、踊り子の写真を組み合わせて花のバスケットを表現している。

 また、旧西宮球場が完成するまで職業野球団の阪急が本拠地としていた旧宝塚球場ゆかりのポスターも興味深い。36年、タイガースとの定期野球戦の開催を告知する一枚は、タイガースのシンボルマークの虎が現在とは逆の左向きになっている。

 今後、一三が所蔵する美術品などにテーマを絞った展示も来年3月にかけて行われる。同館の仙海義之館長は「鉄道や少女歌劇も美術品も、お客さまを喜ばせよう、楽しませようという気持ちが共通している。展覧会を通じて一三の工夫を感じてほしい」と話す。

 6月18日まで。月曜休館。午前10時~午後5時(入場は4時半まで)。一般700円、中学生以下無料。阪急文化財団TEL072.751.3865

 次回以降の特別展は次の通り。

 「はっけん!小林一三と宝塚」(7月1日~9月3日)▽「楽しい茶の湯 タノシイチャノユ」(9月23日~12月17日)▽「Theコレクター逸翁~その収集に理由アリ」(2024年1月20日~3月17日)

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