ラストの衝撃は「何日も引きずるほど…」中瀬ゆかり注目の映画「TAR/ター」を紹介!

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。4月27日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による4月のおすすめ作品】

◆関脇
ノンフィクション「母という呪縛 娘という牢獄」
著 齊藤彩(講談社)

2018年3月に実際に発生した殺人事件を描いたノンフィクション。滋賀県の琵琶湖近くにある河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見されたが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。その後、周辺への聞き込みによって、最近になって姿が見えなくなっている58歳の女性(髙崎妙子・仮名)がいることが判明。家族とのDNA鑑定からようやく身元が判明し、警察は妙子と一緒に暮らしていた31歳の娘・あかり(仮名)を逮捕する。

逮捕当時、あかりは看護師だったが、実は母・妙子から超難関の国立大医学部への進学を強要されて、9年にもわたって浪人生活を送っていたという異様な関係性が判明。母と娘の間に一体何があったのかを、作者・齊藤彩が獄中にいる娘と膨大な往復書簡を交わして紡ぎ出した一冊。

中瀬親方のコメント「(獄中の娘と交わした往復書簡のなかには)母親と娘のLINEのやりとりなども載っているんですけど、(その内容が)ものすごく生々しくて、言うならば教育虐待のモンスターである母親が、娘に対しての仕打ちがどれだけすごかったか分かります。このノンフィクションはSNSでバズっていましたし、出版業界でも『すごいノンフィクションが出た』と話題になっていたんですけど、私はこの本を買ったまま怖くて読めずにいたんです。

この母親と一緒にすると自分の母親には申し訳ないんですけど、私も教育ママに育てられたことがあったので、"ちょっと読むのはきついな”と思って置いてあったんですけど、あまりにも話題になっていたので読んでみたらめちゃくちゃ面白くて。ホラー映画、ホラー小説も真っ青の内容で、この娘の気持ちのほうにグイグイ行くのと同時に、殺された母親と同い年だったこともあって母親側の気持ちにもなって、自分の気持ちが揺れながら(読みました)。別居している父親という存在も出てくるんですけど、家族とは何か、親子とは何かということをすごく考えさせられました。ぜひご一読ください」

◆大関
ノンフィクション「おやじはニーチェ―認知症の父と過ごした436日―」
著 髙橋秀実(新潮社)

母が大動脈解離で突然亡くなり、独り身となってしまった父と一緒に暮らすことに。母は生前、父が認知症であることを息子に隠していたが、父との生活が始まって、父が認知症であることが判明し、介護することに……ノンフィクション作家が綴った介護の記録。

中瀬親方のコメント「髙橋さんはテレビ番組の制作会社を経てノンフィクション作家になられた方で、私は彼の作風がとても大好きで、今回のノンフィクションもとても感動しました。

お父さんは突然怒ったり、同じ話を繰り返したりするんですけど、髙橋さんはそんなお父さんの発言を、古今東西の哲学をもとに読み解くことで全く違って見えてくるという、認知症に新たな角度から光を当てているんです。思わず吹き出してしまうようなお父さんとの会話も、髙橋さんはすごく丁寧に記録されています。認知症って90歳以上の過半数以上がなるのが現状で、私たちにとっても全然他人事ではないなかで、この作品を読んで、今介護をされている方たちも、読み方次第、角度の当て方次第で"こういうふうにも考えられるよ”という介護エッセイになっていますので、本当に素晴らしい一冊です。ぜひお読みください」

◆横綱
映画「TAR/ター」
5月12日(金)全国ロードショー

トッド・フィールド監督16年ぶりとなる待望の最新作。世界最高峰のオーケストラのひとつ、ドイツのベルリン・フィルで女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター(演:ケイト・ブランシェット)。名声を守り続けるための重圧と、何者かに仕掛けられた陰謀によって、少しずつ彼女の心の闇が暴かれていく、驚愕のサイコスリラー。

中瀬親方のコメント「主人公のターは同性愛者で、一緒に暮らしているパートナーは同じオーケストラに所属するヴァイオリニスト(シャロン・グッドナウ、演:ニーナ・ホス)で、2人は養女を育てていて、生活も充実していて、それでいてあらゆる賞を総なめにするほどの素晴らしい才能を持っていて、プロデュース力もすごいので、カリスマ的な存在として音楽界の頂点に上り詰めているんです。そして、作曲家としても素晴らしい才能があって圧倒的な地位を手にしてるんですけれども、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと新曲の創作がなかなかできなくて苦しんでいるという状況のなかで、かつて指導した若手指揮者の訃報が入るんです。

そしてターにある疑惑がかけられて、どんどん追い詰められていくというサイコスリラーなんですけど、とにかくケイト・ブランシェットの演技が本当にすさまじくて鬼気迫るものがあって、指揮をするシーンでは彼女がオリジナルで振付しているんですけど、その指揮者ぶりたるや"絶対、こういう人いるよね”という感じのリアリティで、徐々に追い詰められていくなかでの演技の違いなどもすごいです。

最初の40分ぐらいは、ターのすごさを説明するために少しゆっくりとした展開なんですけど、後半1時間でどわっと一気に進んで、ラストのひとコマは本当に鳥肌もので、今年観た作品のなかでベスト級でした。(その衝撃は)何日も引きずるような映画です。ぜひ観てください!」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回5月のエンタメ番付は、5月25日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~17:59 <TOKYO MX1> 「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正、大島由香里
アシスタントMC:ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/goji/
番組Twitter:@gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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