姫路市立水族館(兵庫県姫路市西延末)に、1966年の開館時から暮らす雄のアオウミガメがいる。推定年齢59歳。同館は積極的にアピールしていないが、国内で飼育されている中では最高齢らしい。そういえば、同館のロゴマークはカメがモチーフだ。歴史をさかのぼると、そこはカメへの愛があふれる水族館だった。(橘高 声)
「あの子ですよ」。飼育員の杉原直樹さん(32)が指さす方を見ると、大きなウミガメがゆっくり泳いでいた。プールにはアオウミガメ2匹とアカウミガメ4匹、タイマイ1匹がいるが、ほかのカメより甲羅が擦れているのかツルツルに見える。杉原さんが餌のキャベツを水面に近づけると、プールから首を伸ばしてパクリと食べた。
日本最高齢というアオウミガメは同館が開館した66年6月、徳島県の施設から記念に贈られた。どのような経緯で姫路に来たのかなど詳しい記録は残っていないが、当時の写真から甲長は30センチほどだったようだ。大きさから推定2歳としたため、現在は59歳。甲長は約85センチになった。
### ■「間違いない」
けれど「カメは万年」と寿命の長い生き物とされるが、本当に59歳で日本最高齢なのだろうか。
NPO法人「日本ウミガメ協議会」が運営する黒島研究所(沖縄県)の亀田和成主任研究員(43)によると、ウミガメはリクガメと違って、個体の追跡が難しく、正確な年齢は把握できないという。ただ、死んだ後に骨の状態からおおよその年齢は分かるらしい。海外では70~80年生きた例があったが、亀田さんも60歳以上のウミガメを確認したことはなく、「姫路のカメは長生き。間違いない」と太鼓判を押す。
日本動物園水族館協会(JAZA)に加盟する51の水族館のうち、姫路を含む28施設がアオウミガメを飼育しているが、ほとんどが年齢不明。唯一、「60歳以上かも」という串本海中公園(和歌山県)も根拠は薄く「うちは曖昧なので、おそらく姫路のカメが日本一です」とトップの座を譲る。
### ■山の上なのに
姫路市立水族館は開園直後からカメの展示に力を入れてきた。初代館長、内田至さんはウミガメ研究者。カメに対する強い思いは引き継がれ、イシガメやアカミミガメなど淡水に生息するカメの研究を進める。70年代半ば以降の研究記録が保管され、現在も産卵場を再現した砂場でふ化率などを調べるほか、産卵観察会ではカメや卵に触れる体験もできる。
「山の上にあるのにウミガメの飼育数も多いし、研究設備も充実している。これからもカメをアピールしていきますよ」と同館の籭(とおし)善之館長。
飼育員の杉原さんは日本最高齢というアオウミガメの健康を祈り「職員を含め、この水族館で一番のベテラン。元気でいてもらうために、少しの変化も見逃さないようにしたい」と力を込める。
同館は手柄山中央公園内にあり、火曜休み。午前9時から午後5時(入館は午後4時半まで)。入館料は大人520円、小・中学生210円。
同館TEL079.297.0321