お化け屋敷、3年ぶり本格的な夏へ手応え 佐野・丸山工芸社 コロナや災害乗り越え日常戻る

夏に向け手応えを感じているという丸山工芸社の柳誠社長(右)と柳亮太専務

 【佐野】5類感染症への引き下げなど新型コロナウイルスの脅威が薄らぐ中、お化け屋敷の企画・運営などの丸山工芸社(田沼町)は、本格的な夏の営業に向け準備に余念がない。昨年100周年を迎えた同社は、これまで毎年夏季には全国10カ所以上でお化け屋敷を手がけてきたが、感染拡大以降の3年間は自粛せざるを得ない状況が続いていた。柳誠(やなぎまこと)社長(78)は「開催への問い合わせも多くなり、ようやく日常が戻ってきたようだ」と手応えを感じている。

 1922(大正11)年創業の同社は、「浅草花やしき」や「後楽園ゆうえんち」などでお化け屋敷の運営に携わってきたことでも知られている。全国的にも業界屈指の老舗で、近年は商業施設などの特設会場が増えており、佐野や宇都宮でも開いてきた。

 「生人形(いきにんぎょう)」を制作する柳社長は県伝統工芸士でもあり、同社は佐野ブランド企業にも認定されている。とりわけ「強い恨み」や「深い悲しみ」などの生々しい表情の人形は、お化け屋敷の“主役”となっている。

 しかし同社はここ数年、立て続けに危機に襲われた。2019年2月、火災に見舞われ、長年受け継いできた貴重な人形や制作道具、舞台装置や音響の大半を焼失した。同10月には台風19号による被害を受ける。さらにここ3年はコロナ禍の苦境に立たされた。

 それだけに規制が大幅に緩和された今、夏にかける意気込みは大きい。県の支援事業を活用し、新たな取り組みとして、オリジナルブランド「うらめしや」「妖師(あやかし)」を立ち上げ、Tシャツやバッグなどのオリジナルグッズも製作した。日本の文化として発信するための海外向けの動画配信も計画している。

 柳社長は「本当に多くの人たちの支えがあった。この夏、心の底から喜んで、怖がってもらえるお化け屋敷を提供したい」と話している。

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