茶園に「バイオ炭」まいて土壌改良、温室ガス削減も シン・エナジーと伊藤園が試験、効果見極めへ

バイオ炭を茶園に試験散布する従業員=鹿児島県志布志市(シン・エナジー提供)

 新電力のシン・エナジー(神戸市中央区)と飲料大手の伊藤園(東京)などは、木材などを燃やして発電するバイオマス発電所で出る副産物の「バイオ炭」を活用し、地球温暖化防止に向けた試験を始めた。二酸化炭素(CO2)を排出しないバイオ炭を茶園にまいて土壌改良の効果を検証。農業のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)の実現に役立てる。(横田良平)

 バイオマス発電の大生黒潮発電所(宮崎県串間市)を運営する「くしま木質バイオマス」、伊藤園が契約する鹿児島県志布志市の農業法人2社との共同事業。シン・エナジーは同発電所を施工し、保守点検を担っている。

 農林水産省は、技術革新による農林水産業の生産力向上と持続性の両立を2021年策定の「みどりの食料システム戦略」で掲げた。環境負荷の低減では温室効果ガスの排出抑制や、化石燃料由来の肥料の使用量削減などを推進する。

 バイオ炭は、木や竹などを燃やして炭化させた固形物。木材や竹に含まれる炭素は、微生物の活動に伴いCO2として大気中に放出されるが、炭化することでCO2を閉じ込めて大気中への排出を抑える。堆肥などと一緒に土壌に混ぜると、根の生育促進などが期待できることから、同省も農地での利用を推奨している。

 試験では、同発電所で出るバイオ炭を粉末状に砕き、車で約30分の距離にある茶園で試験的に散布。保水性などの土壌改良を通じた茶の収穫や品質への影響を評価し、他の肥料を減らすことによる温室効果ガスの排出削減につなげる。

 シン・エナジーは宮崎県のサツマイモ畑でバイオ炭を試し、根の生育改善などの効果が出ているという。

 茶園での試験は数年かけて行う予定。同社の担当者は「うまくいけば他の作物でも応用できる。継続的に効果を見極め、バイオ炭を使って土壌改良を図る文化を根付かせていきたい」としている。

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