アルミ水素で温泉熱く アルハイテック(高岡)加温技術確立、温浴施設の脱炭素推進

廃アルミから「アルミ水素」を抽出する水素製造装置=モンラック・タカオカ

 廃アルミから化学反応により抽出する水素「アルミ水素」の普及を進める環境ベンチャー、アルハイテック(富山県高岡市オフィスパーク、水木伸明社長)は24日、アルミ水素で温浴施設のお湯を沸かす技術を確立し、脱炭素化に貢献する世界初の水素ボイラーシステム「温泉パッケージ」を完成させたと発表した。商業ベースで実用化することで、化石燃料から次世代エネルギーのアルミ水素への燃料転換を促すとともに、水素生成時の副産物である水酸化アルミを多分野で活用することを目指す。

 温泉パッケージの研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2022年度の支援事業に採択。約1億円の技術開発費の3分の2が助成された。北陸ミサワホーム(金沢市)と共同で技術開発を進め、同社が運営するレジャー施設「モンラック・タカオカ(旧とやま・ふくおか家族旅行村)」(高岡市福岡町五位)を研究拠点とした。

 温泉パッケージは、周辺地域で集められた空き缶やアルミ関連企業から出るアルミスクラップを活用し、水素を燃料とする市販のボイラーと連結した水素製造装置に投入。発生したアルミ水素のエネルギーでお湯を沸かす。

 必要なアルミは1時間当たり最大8キロで、毎分100リットルの源泉を30度から45度まで温めることができ、モンラック・タカオカの温泉旅館「越中五位花尾温泉 山帽子」の個室の露天風呂に供給する。

 温浴施設のボイラーは重油やプロパンガスなど化石燃料を使うタイプが主流で、二酸化炭素(CO2)の排出や原油高に伴うコスト増が課題になっている。温泉パッケージはCO2を排出しない上、燃料コストを抑えられる利点がある。アルミ水素を生成する際に生じる水酸化アルミは難燃剤や人工大理石、医薬品に活用でき、販売収入も見込める。

 温泉パッケージは、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会や北陸ミサワホームと連携して販売し、全国展開を目指す。価格は数千万円をめどに検討。化石燃料で稼働するボイラーを使う工場もターゲットとするほか、装置をコンパクト化して住宅への普及も図る。

 24日はモンラック・タカオカで完成式典があり、アルハイテックの水木社長が「温泉業界をはじめさまざまな分野、業種と共に新たなビジネスモデルを構築したい」とあいさつ。金子和生NEDO省エネルギー部長や角田悠紀市長らが祝辞を述べた。

水酸化アルミも活用 水木社長に聞く

 -温泉パッケージの開発経緯は。

 「温泉業界から脱炭素をどう進めたらいいかという声を聞き、脱炭素化を進めるモンラック・タカオカの温泉宿をモデルとして開発に取りかかることにした」

 -副産物の水酸化アルミをどう活用するか。

 「水酸化アルミは難燃剤や医薬品、人工大理石など使い道は多い。日本は輸入大国でボーキサイトから化石燃料を使って取り出しており、グリーンな水酸化アルミの需要が高まっている。住宅メーカーはカーテンやカーペット、壁紙、天井材などとして、ぜひ活用してほしい」

 -全国展開の見通しは。

 「まずはスーパー銭湯を含む温浴施設をターゲットとし、社会実装を推進する。水素製造装置に投入するアルミがどんな状態のものが適しているかを検証し、他のいろんな業種に使えるように開発を進める」

温泉パッケージについて説明する水木社長

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