86歳バンドマンの人生、ドキュメンタリー動画に 日本文理大生が制作活動【大分県】

ハワイアンギターを演奏する安部宣彦さん=大分市の中島中央公民館
安部宣彦さんを撮影する日本文理大の岩下千里さん(右)

 【大分】大分市一木の日本文理大工学部情報メディア学科の学生が、86歳のハワイアンバンドリーダー安部宣彦(のぶひこ)さん(同市城崎町)にスポットを当て、ドキュメンタリーの動画撮影を始めた。妻を亡くした悲しみから立ち直ろうと、約60年ぶりに演奏活動を再開した人生に感銘を受けたという。

 情報メディア学科は授業の一環として、3年生を中心にグループに分かれ、人生を感じさせるドキュメンタリーの動画(約15分)制作に取り組んでいる。岩下千里さん(20)=3年=ら5人は報道で安部さんのことを知り、「ドラマのある人生。いろいろな経験を聞き、撮影したい」と題材に選んだ。

 安部さんは福岡市出身。大学時代にハワイアンの音楽活動に熱中した。保険会社を定年した後、65歳で大分市に移住。2016年に妻を亡くし、喪失感から1年間引きこもった。地域住民の励ましで、18年から「ギター&キーボー」のリーダーとして活動を始めた。現在はボランティアで高齢者のサロンや音楽祭で演奏している。

 20日に同市の中島中央公民館で演奏会があり、最初の撮影をした。安部さんは助っ人の長岡昭博さん(78)=同市松が丘=を加えた4人で「星影のワルツ」など6曲を披露。ハワイアンギターの涼しげな音色を響かせた。会場は温かい雰囲気で、女性(87)は「前向きな姿勢に元気をもらえる」と喜んだ。

 岩下さんらは5回の撮影を予定しており、編集作業の後、8月上旬に大学で発表する。同学科の小島康史教授(60)は「試練を乗り越え、今の人生を謳歌(おうか)する姿を描くことで、人間の素晴らしさを表現できそう」と話す。

 安部さんは「私を選んでくれて驚いた。皆さんが励みになると言ってくれるので頑張っている。撮影は少し恥ずかしい」とはにかんだ。

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