長崎・対馬で議論 核のごみ最終処分場とは? 国内で1カ所、4万本超を計画 請願次第で市長判断に

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の第1段階となる文献調査を巡り、長崎県対馬市で賛否が分かれています。最終処分場の概要や調査の流れ、同市での動きを含め、ポイントを整理しました。
 -核のごみとは何ですか。
 原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す再処理で発生する廃液を、ガラスと混ぜ合わせてステンレス製の筒に入れて固めたもので、「ガラス固化体」とも言います。
 処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、ガラス固化体は高さ約130センチ、直径約40センチで、製造直後に人が触れると、20秒ほどで死に至るほど強力な放射線を出します。国内には昨年度末時点で2530本。青森県六ケ所村の施設などで一時貯蔵されています。国内の使用済み核燃料を再処理した場合、既存の固化体と合わせて約2万7千本相当に上ると見込まれています。
 -最終処分場はどういう施設ですか。
 核のごみは極めて危険なため、300メートルよりも深い岩盤に埋める地層処分で、人間の生活環境から数万年間隔離することが法律で決められています。処分場は1カ所作り、4万本超のガラス固化体を処分する計画です。
 -建設場所はどのように決まるのですか。
 3段階の調査を経て建設地が決まります。文献調査は約2年間で資料を基に地質や活断層などを確認。概要調査は約4年間でボーリングで地質や岩盤を調べます。精密調査は約14年間で地下に調査用施設を設置します。
 NUMOは全国10程度の市町村で文献調査をしたい考えで、国は調査地域増に向けて全国の自治体に働き掛けを強める方針です。
 -各種調査について、もっと教えてください。
 文献調査を受け入れた自治体などには最大20億円が国から交付されます。全国では北海道寿都町と神恵内村が受け入れています。概要調査は最大70億円。精密調査の交付額は未定です。
 文献調査は市町村が応募するか、国の申し入れを市町村が受諾すれば始まります。概要調査以降に進むには、市町村長と都道府県知事の同意が必要です。
 -対馬市での動きは。
 業界団体などが人口減少や産業衰退などに危機感があるとして、文献調査受け入れなどを求める請願を6月の定例市議会に提出します。交付金や関係人口拡大に期待する声があります。
 ただ、島の豊かな自然や1次産業への風評被害の懸念に加え、処分場の安全性への疑問は根強く、反対派市民団体は署名活動を展開し、調査反対を訴える請願を提出する構えです。
 市議会は請願を審議し、議会としての意向をまとめます。調査受け入れを求める請願が採択されれば、比田勝尚喜市長は判断を迫られることになります。

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