ポスト「イニエスタ」は? ビジャ、ポドルスキ…世界的スター獲得次々、「豪腕」三木谷氏の動向に注目

会見場に入場するヴィッセル神戸のイニエスタ=25日午後、神戸市中央区波止場町(撮影・小林良多)

 サッカーのJ1ヴィッセル神戸から去ることが決まったアンドレス・イニエスタ。この世界的名選手の神戸入りが実現したのは、クラブの三木谷浩史会長(58)=楽天グループ会長兼社長=の豪腕を抜きにして語れない。

 母国スペインの名門バルセロナからの退団が発表された2018年当時、報道ベースで中国・重慶が移籍先として浮上していたが、直接交渉に乗り出したとされる三木谷会長が逆転で獲得にこぎつけた。正式契約は5月24日。東京まで自身のプライベートジョットで歓待した。

 

イニエスタ>球団

 年俸は約30億円。当時比較できた神戸の最新の総人件費(16年度)は約20億6800万円、三木谷氏が率いるプロ野球楽天の年俸総額も約28億円(18年シーズン)で、ともにイニエスタ1人で上回った。

 振り返れば、積極投資の序章は17年だった。

 元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキを推定年俸6億円で獲得し、入団会見に同席した三木谷会長はこう話した。

 「ポドルスキ選手を皮切りに、むしろ世界のスーパースターがどんどんJリーグに来るような流れになればいい」

 波及効果を口にしていたが、自ら有言実行していく。翌年夏のイニエスタに続き、その年の12月にはスペイン代表歴代最多得点を誇るFWダビド・ビジャとの契約をまとめた。19年夏には現役のベルギー代表DFだったトーマス・フェルマーレンを招くことにも成功した。

 ビジャ、イニエスタ、ポドルスキの頭文字を取った「VIPトリオ」を中心に、きらびやかな実績と知名度。そこに、今も神戸を支えるMF山口蛍やDF酒井高徳、若手有望株だったFW古橋亨梧(現セルティック)ら日本人選手が融合し、20年正月の天皇杯全日本選手権決勝で頂点に上り詰めた。

 クラブ始動25年、ようやくの初タイトルとして実を結んだ。

 

蜜月関係

 イニエスタは契約会見で神戸入りの理由をこう話していた。

 「提示されたプロジェクトが非常に興味深い」

 三木谷会長が示したクラブ全体の「バルサ化」の方針が決め手とみられた。トップチームだけでなく、育成部門のスタッフにもイニエスタが信頼を寄せるスペイン人が起用され、ポゼッションサッカーを落とし込む体制が整えられた。

 蜜月関係の2人。三木谷会長は天皇杯優勝直後、神戸新聞などのインタビューに、イニエスタと進めてきたプロジェクトの一端を明かしていた。

 「内側からのJリーグ改革。日本はサッカー先進国の中でも一番の経済大国で、やり方次第で世界のトップリーグになれる。(神戸が将来的にバルセロナのように?)そうできると思っている」

 

路線変更?

 バルサ化の象徴イニエスタとともに、20年2月には富士ゼロックス・スーパーカップを制したが、同年のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)は4強止まり。Jリーグでは21年シーズンに過去最高の3位をマークしたが、頂点には届いていない。

 ポドルスキ、ビジャ、フェルマーレンは引退や退団でクラブを去った。三木谷会長が関わる補強も路線変更したのか、近年は大迫勇也、武藤嘉紀の両FWら日本人の実力者がターゲットになっている。

 イニエスタが去った後、今夏の移籍市場で再び世界的なスター選手に目を向けるのか。世間を驚かせる獲得劇の再現はあるのか。三木谷会長の動向に注目だ。(有島弘記)

© 株式会社神戸新聞社