全国の重大少年事件記録などが廃棄されていた問題で、2010年に兵庫県宝塚市で起きた自宅放火事件は、神戸家裁の職員が「外部からの申し出がなかった」ことなどを理由に十分な検討をせずに事件記録を廃棄していたことが分かった。25日に公表された最高裁の調査報告書で経緯が明らかにされた。
事件は10年7月、当時中学3年の女子生徒が同級生の少女と共謀し、女子生徒の自宅の壁に着火剤を塗って放火し、家族3人を死傷させた。神戸家裁は2人について、「事前に燃焼実験を行うなど計画的」などとして少年院送致を決めた。
事件から10年後の2020年、最高裁は永久保存(特別保存)の運用要領を策定するよう全国の裁判所に通知。神戸家裁は、特別保存の基準を「判例集に掲載している」のほか、「主要日刊紙2紙以上に記事が掲載されている」ことも含め、「弁護士会や一般の人など外部からの申し出があれば検討する」などと定めた。
調査報告書によると、廃棄当時の職員らは調査に対し、この事件の記録が保存されているか、廃棄されているかについて把握していなかったという。
また、放火事件の記録は運用要領が策定された後に保存期間が満了しているが、職員らは「2紙掲載」の基準について「(保存している事件記録を)全て調査して抽出するのは無理」と考え、外部からの申し出もなかったため、詳細に検討したり所長に諮問したりすることなく廃棄したとした。