稲美・高1男子暴行死と御津・タクシー強盗 「廃棄対象にした認識すらない」事件内容は吟味されず 兵庫

兵庫県稲美町の集団暴行死事件で亡くなった高松聡至さん(母由美子さんの了承を得て遺影を撮影)

 全国の重大少年事件記録などが廃棄されていた問題で、1997年に兵庫県稲美町で起きた高1男子生徒集団暴行死事件は、神戸家裁が保存どころか、廃棄対象にした認識すら持っていなかった。25日に公表された最高裁の調査報告書でも、職員が何の疑問も持たず、淡々と処分した様子が記されている。

 事件は97年8月に発生。当時14~16歳の少年10人が、中学時代の友人だった15歳の少年を深夜、神社に呼び出して暴行を加え、9日後に死亡させた。加害少年らは少年審判を経て少年院に送致された。遺族が後に民事訴訟を起こして記録の一部を取り寄せたが、残りの記録は全て廃棄された。

 調査報告書では、この事件を「担当職員が保存の認識も、廃棄対象にした認識もなかった事案」として言及。職員がシステムから廃棄対象の事件を事務的に抽出して目録を作成し、記録は廃棄用の棚に移された。

 決裁で確認されたのは、保存期間のみ。管理職の職員は「基本的に全件廃棄」と考えていたため、事件の内容や性格を吟味することはなかった。

 また、00年に御津町(現たつの市)で、タクシー運転手が当時16歳のカップルに殺害されて売上金を奪われた強盗殺人事件についても、神戸家裁の職員は事件番号と保存期間のみをチェック。ほかに意識した項目はなかったという。

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