TISカンスタに開所3年 科学的知見、幅広い層へ 県民健康維持にノウハウ生かす

斎藤トレーニングコーチ(右)とトレーニングに励む福田=宇都宮市のとちぎスポーツ医科学センター

 科学的な知見で本県アスリートの育成と強化を図る拠点として、県が宇都宮市のカンセキスタジアムとちぎ内に整備した「とちぎスポーツ医科学センター(TIS)」が29日で開所から3年を迎える。当初の最大の目標だった栃木国体を終えた今、トップアスリートに限らず、高校部活動などでも利用が広がっている。将来的には競技力向上だけでなく、県民の健康づくりでも存在感を発揮したい考えだ。

 19日、同センターのトレーニングルーム。日本競輪選手会栃木支部の福田滉(ふくだひろし)(23)が、TISの斎藤隆行(さいとうたかゆき)トレーニングコーチ(49)とともに、バーベルを持ち上げたり、高さ1メートルほどの箱に飛び上がったりするメニューに汗を流していた。

 斎藤氏は「パワーと敏しょう性を鍛えるのが目的。競輪選手が最短時間で最大限の力を発揮するためのメニューを組んでいる」。週1回程度、斎藤氏と調整に励む福田は「(自転車の)ペダルを踏み込む時の力の加わり方が格段に良くなった。レースで結果を出すための体づくりができている」と手応えをつかむ。

 TISは2022年のいちご一会とちぎ国体・とちぎ大会に合わせて整備された。県スポーツ協会が管理・運営を担う。最新鋭のトレーニング機器を備え、体力測定でのデータを基に、個々の特性に応じたメニューを利用者に提案。約10人の専門スタッフが利用者のトレーニングに寄り添う。

 国体までは出場選手またはその候補を優先的に受け入れてきたが、国体後は「中学や高校の部活動、小学校のクラブチームの利用が増えた」(池田達昭(いけだたつあき)センター長)という。利用者数は国体選手たちの利用が減ったため、21年度の1万1582人から22年度は1万1347人とわずかに減ったが、池田センター長は「裾野は広がっている」と感じている。近年の科学的トレーニングへの関心の高まりに加え、県内競技団体などへの利用呼びかけや、交流サイト(SNS)を使ったPRの効果が出始めているという。

 今後の課題としてはアスリート以外の県民への認知度向上。県の条例は同センターの目的を「本県のスポーツに関する競技水準の向上を図る」としており、池田センター長は「国体が終わった今、競技力向上だけではセンターのアピールポイントにならない」と話す。

 今後はこれまでに培ったデータやノウハウを生かし、子どもの体力づくりや高齢者の健康寿命延伸にも力を尽くすという。限られた人員の中、民間企業や医療機関、大学などの教育機関との連携を図るなどして「地域に求められる役割を担いたい」(池田センター長)としている。

© 株式会社下野新聞社