五月晴れと五月雨

 旧暦5月は梅雨どきだった。昔の暦の呼び名が今に残った「五月雨(さみだれ)」は梅雨に降り続く雨のことをいう。「五月(さつき)晴れ」は、新暦5月の爽やかな青空を表すことも今は多いが、もともとは梅雨の晴れ間を指す▲先週末、梅雨の晴れ間に県高校総合体育大会(県高総体)の熱戦が始まった。4年ぶりに観客の入場に制限がない。紙面を飾る高校生の表情は「晴れやか」の一語に尽きる▲これもまた4年ぶりに、長崎くんちの稽古始めに当たる小屋入りが先日あった。胸躍らせて秋の本番を待つ人は多いだろう。コロナ禍の出口のドアを開けば、上空に五月晴れが広がる▲私たちの生活が元通りに近づき、心弾むイベントが戻るのは喜ばしいが「いいことずくめ」でないことは心に刻みたい。一つ挙げると、全国の公立病院の3割で看護師の離職率が昨年度より上昇しているという。コロナ対応に疲れ果て、「休みたい」という声が上がる▲もう一つ、季節性インフルエンザの感染者が今年はこの時期になっても収まらない。コロナが襲った間、インフルエンザは広がらなかった。そのために免疫が低下したのかどうか▲コロナ禍の出口が見えてきて、のぞく晴れ間もあれば、降り始める雨もある。今はどうかご自愛くださいと、心に五月雨が降る人へ微力ながら申し上げたい。(徹)

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