【宇佐】宇佐市教委は、市出身で新聞4こま漫画の先駆者といわれる麻生豊(1898~1961年)の代表作「ノンキナトウサン」を復刻した。1924(大正13)年発行の「一ノ巻」。郷土愛を養うきっかけづくりや宇佐のPRに役立ててもらおうと、市内の小中高校などに贈った。
麻生は少年時代を宇佐で過ごした。
報知新聞に入社し、紙面の漫画などを担当。ノンキナトウサンは前身の漫画を23年4月から日曜版で8こま、6こま作品として不定期連載した。同年11月からノンキナトウサンに改題して夕刊に毎日掲載となり、新聞4こま漫画のスタイルが確立した。
のんきな父さんが主人公。同年9月1日に発生した関東大震災直後の混乱した世の中を舞台に、人々のいさかいや失業者の苦労などがユニークに描かれている。被災した人々をユーモアで癒やし、復興を勇気づけるために執筆されたともいわれる。連載は昭和初期まで断続的に続き、映像化もされた。
「一ノ巻」は新聞連載初期の100作品を収録し、6こま作品もある。現存する本がほとんどない中、宇佐市民図書館の職員が古書店で見つけ、連載開始100周年を記念した復刻を計画した。
著作権がなくなっていることを関係者に確認。国の地方創生臨時交付金など事業費88万円をかけ、原本を基に700冊を発行した。復刻した本(B5判、100ページ)は市内の小中高校や県内外の公共図書館などに寄贈した。
市民図書館の松寿敬(しょうじゅ・さとし)館長(58)は「当時の世の中をうかがい知ることができる貴重な資料。多くの人に読んでほしい」と話している。