社説:加藤選手全仏V 失格判定を乗り越えた

 別の種目で失格とされてしまった大ショックを、はねのけての快挙である。

 パリで行われていたテニスの全仏オープン混合ダブルス決勝で、日本の加藤未唯選手(28)=京都市左京区出身=が、ドイツの男子選手と組んで優勝した。

 カナダとニュージーランドのペアと対戦し、マッチタイブレークにまでもつれ込む接戦を、見事に制した。

 テニス四大大会でのタイトル獲得は初めて。日本人選手の全仏混合優勝は、2年連続となる。

 これを受けて京都府がスポーツ賞特別栄誉賞、京都市がスポーツ最高栄誉賞を贈るとした。

 地元や関係者の人々とともに、喜びを分かち合いたい。

 単に優勝しただけでなく、大舞台で発揮した精神力の強さが、ファンたちの感動を呼んだといえそうだ。

 加藤選手は、混合ダブルスの前に行われた女子ダブルスにもエントリーしていた。

 その3回戦で、プレーの合間に送ろうとした球が、ボールガールに当たった。

 故意ではなかったが、危険な行為とみなされて、失格の判定が下った。

 加藤選手は、人目もはばからず号泣したという。よほど悔しかったのだろう。だが、このショックを引きずらず、次の種目で結果を残した点を高く評価したい。

 四大大会の規則では、故意かどうかは関係なく、打った球が人に当たると、危険な行為として罰則の対象になる場合がある。

 3年前の全米オープンで第1シードのジョコビッチ選手は、ベンチに戻る際に打った球が線審を直撃したため、失格となった。

 ただ今回、加藤選手の送った球は山なりで、それほど強いものではなかった。

 判定は主審がいったん警告を言い渡した後、対戦相手の抗議を受けて失格に変更された。ビデオによる確認も行われていない。厳しい処分となったのは残念である。

 他の多くの選手が失格を不公平とし、プロ選手協会は「不当な判定」との声明を出した。

 失格を不服として、加藤選手は四大大会側に提訴している。

 大会責任者は処分を再検討し、関係者と世界のファンが納得できるようにしてもらいたい。

 今後も、7月のウィンブルドン選手権はじめ四大大会の戦いは続く。加藤選手には、今回の経験を糧に一層の飛躍を期待したい。

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