受け継いだ畑に私財で音楽ホール、20年続けた「クラシック楽しむ場所」

木造平屋建ての「かめおか桂ホール」の前に立つ桂さん(亀岡市中矢田町)

 京都府亀岡市の桂文子さん(79)は、私財をなげうって亀岡市内に造った音楽ホール「かめおか桂ホール」を、20年以上運営している。国内外からプロの演奏家を招いてコンサートを主催したり、練習に貸し出したりして「亀岡で身近にクラシックを楽しめる場」を提供している。

 亀岡市旅籠町に生まれ、現在も暮らしている。父はかつてピアニストを志すほどの音楽愛好家で「父はよく歌うし、クラシックのレコードが常に流れていた。音楽があふれている家庭で、私も自然と好きになってしまった」と笑う。学生時代に英文学に引かれ、後に龍谷大の教授になり翻訳や研究に打ち込んだ。

 ホールが立つ場所にはかつて代々引き継いできた畑があり、母が野菜を作っていた。だが2000年ごろに高齢を理由に耕作をやめ、今後土地をどうしようかと考えていた。

 「あなたは昔から亀岡にクラシックが演奏できる場所をほしがっていた」。事情を知った親しい友人から言われた。市内にはガレリアかめおかや亀岡会館(15年閉鎖)があったが「音響が良くなく、クラシックには向いていない」と感じており、自費で音楽ホールを建てることを決意した。

 ホールは音響にこだわったのはもちろん、「林業再生につながればと、節が多く値段が高くても全て国産材を使った」のが自慢だ。5千万円以上をかけて、02年12月にホール(179平方メートル)が完成した。

 不定期で開くコンサートでは、クラシック好きの知り合いたちが入場時の受け付けや録音などの手伝いをしてくれている。利用があるのは月数回程度というが「私の本業は今も英文学。あくまで好きなことの一つとして無理せずやってきたので、ここまで続けられたのかな」と振り返る。

 来年に傘寿を迎える。ホールを続けていくために「いつかはここを愛してくれる人に引き継ぎたい」と願う。

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