ワラスボの「もくさい」、三福海苔(佐賀市)が販売 地元の味を守り伝える

有明海のエイリアン「ワラスボ」を粉末状にした伝統食品「もくさい」=佐賀市川副町の三福海苔

 有明海の珍魚ワラスボを粉末状にした伝統食「もくさい」を、佐賀市川副町ののり製造販売会社「三福海苔」が製造・販売している。有明海沿岸の中でも特に川副町の家庭で食されていたが、ワラスボの漁獲が減り、希少な食品となっていたため、同社は失われつつある地元の味を守りたいとして製造に乗り出し、その風味の豊かさを伝えている。

 「もくさい」は乾燥させたワラスボを粉末状にした食品。カルシウムが豊富でうまみが強いのが特長で、匂いの香ばしさや骨のこりっとした感触を楽しめる。豆腐やご飯にふりかけたり、しょうゆをかけてそぼろ状にしたりして食べる。

 昭和初期に発行された郷土資料第一集「佐賀縣に於ける食の生活に關する考察」(佐賀県女子師範学校)にも、「わらすぼを素だきして骨と共にくづし、日に干し臼にてつき粉にして保存する。適宜とり出して醤油をかけて食す」といった記述がある。同じ沿岸の福岡県柳川市でも「こぶ」などの名称で食べられていた。

 三福海苔の川原常宏社長(62)によると、以前は地元漁師の男性が作った「もくさい」を瓶に詰めて販売していた。男性が漁を引退した際、「このままでは伝統食品が絶えてしまう。守らないと」と作り方を教わり、2009年ごろから製造を始めた。

 同社は市場で仕入れたワラスボを下処理して鍋で炒り、干した後に粉末に加工している。1瓶(40グラム)は1782円。昨年は収穫量が少なく、予約分の数十瓶しか作れなかった。漁期は5、6月で、川原社長は「人員態勢も増やし、昨年の倍以上は作ることができている」と話す。

 特異な見かけから「有明海のエイリアン」とも呼ばれるワラスボ。絶滅の恐れがある野生動植物をまとめた県のレッドリストに、準絶滅危惧種として分類される。川原社長は「川副でも、もくさいと言って分かる人は少なくなった。うちが作らないと絶えてしまうかもしれない」とこぼし、「ワラスボが手に入るうちは作り続けていきたい」と継承への使命感を語った。

 商品の問い合わせは三福海苔、電話0952(45)0039。(草野杏実)

「もくさい」に醤油をかけ、そぼろ状にして食べてもおいしい

© 株式会社佐賀新聞社