ソバや大豆栽培に被害、「帰化アサガオ」の脅威…福井県内で広く繁殖、対策は 県が農家へマニュアル公開

川沿いの道路脇に繁殖するマルバルコウ=福井県福井市

 ソバや大豆の栽培に被害を及ぼす外来種の「帰化アサガオ類」が福井県内で広く繁殖している。ほ場に入り込むと作物につるが絡みつき駆除が難しく、作物の生育を阻害するなどの影響が出る。福井県内では、ほ場周辺のあぜなどにとどまっているとみられ、専門家は「今食い止めれば被害は防げる」と指摘する。県は対応マニュアルを公開し、農家に秋にかけて防除するよう呼びかけている。

 県内で確認されている帰化アサガオ類はアメリカ大陸原産のマルバルコウ、マメアサガオ、ホシアサガオ、マルバアメリカアサガオ、アメリカアサガオの5種類で、特にマルバルコウが多く見られる。国内には飼料などに種が交ざって入ったとみられ、関東以西を中心に広がった。県農業試験場などの調査では、県内では少なくとも10年ほど前から見られ、現在はほぼ全域にわたり道路脇や河川の土手、あぜなどに広がっている。

⇒ラムサール登録の中池見湿地で「侵略的外来種」相次ぎ発見

 福井県立大学生物資源学部の水口亜樹准教授は「繁殖力が強く、農業では最もやっかいな部類」と指摘。関東や東海では大豆畑にまん延して収穫できなくなった事例が確認されている。ほ場全体に葉を茂らせ、作物に陽光が当たらず育たなくなる。落ちた種は数年間発芽機能があり、まん延すると駆除は数年がかりになるという。

 県農業試験場と県内各農林総合事務所が水口准教授と協力し今年4月、対応マニュアルを作成。拡大を防ぐには花が本格的に咲き始める8月ごろまでに除草することが大切。一度除草しても次々と発芽するため、9月ごろまで約3週間ごとに3~4回、草刈りや除草剤での防除が重要としている。

 河川の土手や道路脇などで繁殖するため、分布域を狭めるのは簡単ではないが「ほ場に入り込ませないことが大事」と県農業試験場の担当者。県は普及指導員、JAは営農指導員などを通じて啓発しているほか、県農業試験場は農家向けの栽培講習会などで対策を呼びかけている。

 大野市のソバ農家の一人は3~4年前から防除に取り組み、徐々に生息数が減っているという。「まめに除草剤をやれば枯れるので、今のところ怖くない。周りの農家とも声を掛け合いながら、しっかり対策していきたい」と話した。

© 株式会社福井新聞社